第四十六話

 すると『雷神らいじん』と『風神ふうじん』を交差させた佐吉さきちが、えた。

「もう一度、喰らえ!」


 エレキテルのあらし


 再び襲ってきた巨大な回転するエレキテルのあみを、俺たちは素早く左右によけた。


 すると美玖みくさんが、叫んだ。

「今だ、誠兵衛せいべえ!」

「おう! 喰らえ!」


 俺は『血啜ちすすり』で衝撃波しょうげきはを出す音波おとはを放った後、上段、中段、下段の左、真ん中、右に九つの突きを、半次郎はんじろうに放った。すると九つの衝撃波が、半次郎を襲った。


 俺流おれりゅう絶対死ぜったいし


 美玖さんも佐吉に、九つのきを放った。

「喰らえ! 本家本元ほんけほんもと!」


 絶対死!


 一度に複数の突きの衝撃波を喰らった半次郎と佐吉は、あおむけに倒れて気絶きぜつした。一息ついて俺は『血啜り』で『風神』を、美玖さんは『きわみ』で『雷神』を真っ二つにった。


 俺と美玖さんは喜びながら、顔を見合みあわせた。

「やったな、美玖さん!」

「うむ、そうだな……。うっ!」と美玖さんは、地面に両膝りょうひざをついた。


 俺は何ごとかと、あわてて声をかけた。

「大丈夫か、美玖さん!」


 すると美玖さんは、青白い顔で告げた。

「うむ……。この戦い、何とかやりげられると思ったが、無理なようだ……」

「え? どうしたんだよ、美玖さん?!」

「うむ。実は私は、妊娠にんしんしているのだ……。三カ月だそうだ……」


 俺は、隣の森にひびくくらいの声を上げた。

「え?! ええええーーーー!!!!」


 そして、おそる恐る聞いてみた。

「み、美玖さんが妊娠って……。そ、それで相手は誰っすか?」

「うむ。市之進いちのしんだ」


 市之進は、四刀しとう三番刀さんばんがたなだ。


 俺は予想外の答えを聞いて、再び隣の森に響くくらいの声を上げた。

「え?! ええええーーーー!!!!」


 そして、再び聞いた。

「い、市之進って、一体いつから?!」

「うむ。市之進が、我が沖石おきいし道場で師範代しはんだいになった頃からだ……」

「そ、そうなんすか……」

 

 美玖さんは、語った。その時、私も気付いたのだ。お前が言った通り市之進は顔もいいし、剣の腕も立つと。そして教え方も上手い。そして、私は考えた。私の婿むこになるのは、市之進しかいないと、と。


 俺は再び恐る恐る、聞いてみた。

「あ、ああ。確かに前に、そんなことを言ったけど……。それにしても、市之進とねえ……。市之進から、言いってきたんすか?」

「いや。私が市之進の部屋に、夜這よばいをかけた」


 俺はもちろん、ツッコんだ。

「いやいやいや、美玖さん、夜這いって……。夜這いって普通、男が女にかけるもんじゃ……」

 

 すると美玖さんは、右手を力強く握って力説りきせつした。

「いや、男女平等と言うではないか。私は思う。夜這いをかけるのに、男も女も関係ないと!」


 俺は、美玖さんの力説に圧倒あっとうされた。

「い、いや……。それは、まあ、そうかもしんないですけど……」

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