第三十四話

 市之進いちのしんは考えた。これは厄介やっかい神通力じんつうりきだ。右手をつかまれて攻撃を封じられて、られるとは……。それなら距離を取って、音波おとは衝撃波しょうげきはで攻撃するしかない、と居合術いあいじゅつの構えを取った。


 すると彦太郎ひこたろうは、不敵ふてきに笑った。

「くっくっくっ、またさっきの攻撃か? いいだろう、やってみろ。この彦太郎様に同じ技が通じると思うのならな……」


 市之進は構わず、放った。



 音波!


 いいいいんんんん!



 すると彦太郎は、余裕の表情で叫んだ。


 碗盾わんたて


 すると彦太郎の左腕がぱたぱたと折れて、長方形のたてになった。彦太郎は、それで衝撃波を防いだ。


 碗伸わんしん


 市之進が驚いているスキに彦太郎は伸びた左腕で、またもや市之進の右手をつかんで攻撃を封じた。そしてまた距離を詰め、今度は右肩を斬った。


 市之進は、あせった。まさかこんな方法で音波を防ぐとは……。しかも両肩を斬られて刀を構えるのが、きつくなった。だが倒さねばならない。『血啜ちすすり』と『きわみ』を守るために。そして四刀しとう三番刀さんばんがたなとして、負ける訳にはいかない。そう決心すると市之進は、またもや居合術の構えを取った。


 彦太郎は、はしゃいだ。

「おいおい、また、さっきの攻撃かよ……。いいぜ、何度だって防いでやる。そしてまた斬ってやるぜ! ひゃっはー!」


 市之進は音波を放った後に、きを放った。



 音波、くちばし!


 ぎゅいいいいんんんん!



 そして彦太郎の左腕の盾に、一寸(約三センチ)の穴をあけた。


 彦太郎は、驚いた表情になった。

「な、何だ、この攻撃は……」


 市之進は、冷静に答えた。今の攻撃は、音波の衝撃波を一点に集中させたものだ。もちろん攻撃範囲は狭くなるがその分、威力いりょくは増す。君の盾を貫通かんつうするほどに、と。


 彦太郎は、あせった表情になった。

「くっ、今まで、この盾で防げなかった攻撃は無かったのに……」


 そしてあせっている彦太郎に、市之進は攻撃を続けた。



 音波、口ばし!


 音波、口ばし!


 音波、口ばし!


 ぎゅいいいいんんんん!!!



 攻撃を喰らった彦太郎の左腕は盾の形をたもてなくなり、だらりとれ下がった。


 市之進は、言い放った。

「もう盾で防ぐことは出来ないようだね……。ならば、もう一度喰らってもらおう!」


 音波!


 いいいいんんんん!


 彦太郎の全身を、二度目の衝撃波がおそった。それにえきれず彦太郎は、後ろに倒れた。市之進は彦太郎に近づいて、『おと』で『青龍せいりゅう』を真っ二つにした。


 彦太郎は、うめいた。

「ち、ちくしょう……」


 そんな彦太郎に市之進は、言い放った。

「思い知ったかい、敗北はいぼくの味を……。そして四刀の三番刀の実力を!」

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