星霊契約

兎ノ月桜

プロローグ

 ドゴンッ…


「カヒュッ…!!」

 吹き飛ばされ受身を取る暇無く背中から叩きつけられた。背中がとてつもなく痛い、呼吸も苦しい、脚や腕も酷使しすぎて震えている。


 諦める

 ▶︎立ち上がる


 ここで諦めてしまおうかと一瞬思うも「まだ倒れる訳にはいかない」と思い直す。

 顔を上げる、敵を見据える、ボロボロの体に鞭打ち立ち上がる。

「刻め!ラクシャ…ギィッ」

 もう一度立ち向かおうとして、武器を呼んだ瞬間、また吹き飛ばされた。床に叩きつけられ跳ね飛び、全身に痛みがはしる。腕や脚の筋肉がちぎれてしまいそうなくらいの痛みだ。もう立ち上がれそうにない。


 ▶︎再度、立ち上がろうとする。

 諦める


 それでも諦めず、もう一度立ち上がろうとすると腕を切り飛ばされた。血が噴き出す。何をされたのか認識出来ずに狼狽えていると次は足を切り飛ばされる。やっと何をされたのか理解した瞬間痛みが走る。

「あがァァァァ……!!」

 激痛で倒れ込みのたうち回るもなんとか立ち上がろうとするもバランスが取れず倒れる。そうしているうちにゆっくりとした足音が近づいてきた。


 コツ…コツ…コツ…


 痛みに耐えながら顔を上げ足音の方を向くと愉悦の表情を浮かべたヤツが近づいてくるのが見える。


「ンフフフフ、無様ねぇヘルナ♡

 お前を殺す!だとか息巻いていたのにこのザマ!そんなのでよくもまあそんな事が言えたものねぇ〜」


 バカにした口調でヤツは歩いてきながらそう言った。全ての元凶であるヤツへの憎しみと何も出来なくなっている自分への不甲斐なさでいっぱいだった。


「で〜も〜、お遊びはここまでにしましょうか。私そこまで暇ではないし、それに貴方で遊ぶのも飽きてきたし、でも生かしてはおかないわ。牙を剥いてきた獣は始末しないと後が怖いでしょう?」


 そうヤツは言いながら、腰に差していたエストックを抜き放ち、こちらの首筋に向ける。

 エストックが風を纏い始めた、その風はゴーーッ!という荒々しい音を立て、こちらの息の根を止めんと今か今かと待ちわびているようだった。

 殺される!そう思った自分は、


 ▶︎諦める

 抵抗する


 抵抗するのをやめ、ヤツの目を見据えた。

 するとヤツは、


「あらあらあらァ〜?どうしたのかしら〜?

 さっきまでの威勢はどこへいったの?私を殺すのでしょう?復讐するのでしょう?最後まで惨めに抗って私を楽しませて下さいな?」


 ヤツがそういうが自分は黙ったまま目を閉じる。それが面白くなかったのかヤツは、


「つまらない!」


 そう言いエストックを構え直しこちらに向けて風を放った。それを見届けながら自分は…私は…!


「私は…!必ず!お前を殺す!!」


 そして、私の頭は宙を舞った。

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