ドブスでいじめられっ子の私が学校1のイケメンに告白されたから罰ゲームかも知れないけどとりあえず付き合ってみる話

暮伊豆

第1話 ドブスは告白される

「静香。君のことが好きになってしまったんだ。俺と付き合ってもらえないか?」


私の名前は御前みさき 静香しずか。放課後、帰ろうとしていた私に下駄箱前で壁ドン告白してきたのは、学校一のモテ男『九狼くろう じょう』君。

正直なところ身に覚えなどない。だって私は自他共に認める不細工だから。デブではないだけマシかも知れないが。


「一応理由を聞いていい? 私のどこが好きなの?」


どうせ罰ゲームか何かだろうと分かってはいるが、私だって乙女なんだ。愛を囁かれてみたい気持ちは止められない。


「芯が通ってる所かな。君ってブレないよね。靴を捨てられても、教科書を切り刻まれてもさ。」


そこか……確かに私はいじめられている。中学3年の春から……高校2年になった今でも。いじめの主犯も分かっているし、両親へも報告してある。


「じゃあもし私が『イエス』と答えたら九狼君は私の彼氏になるの?」


「当たり前じゃん。みんなに静香が俺の彼女だって自慢するよ。」


この男は……初対面ではないが、私のファーストネームを気軽に呼び捨てにしている。私は君を付けて呼んでいるのに。


「そう。なら返事はイエスよ。今日からよろしくね。あ、私は裸足で帰るけど九狼君は気にしないで。」


「うん、よろしく、って裸足!? 靴ならそこに……」


あるにはあるが、中に何かの糞が詰まっているようなのだ。こんな時には靴を放置して裸足で帰ってくるようママから指示されている。まあ靴下ぐらいは履いているけど。


「うん裸足。このまま帰るけど九狼君はどうする?」


「じ、邪魔じゃないければ駅まで一緒に帰っていいか? 色々と話そうぜ。」


「いいよ。私のことは気にしないでね、いつものことだから。」


「やっぱ君って芯が強いよな……」




私が通う私立優極秀院ゆうごくしゅういん高校。県内はおろか県外から家ごと引っ越してまで通おうとする生徒がいるほどの、全国でも指折りの進学校だ。


私をイジメのターゲットにしてくる女、北条 雅子みやびこ。旧華族だかなんだか知らないがどこがみやびなものか。せっかく見た目は美人なのに。

こいつが私に目を付けたのは中学2年の頃、学年末テストが返ってきてからだ。それまではこいつが常にトップだったのが、私がトップに立ってしまってからだ。

もちろん各々に順位は通知されるが、誰が何位かなんて公表されない。しかし彼女は2位だったことがよほど腹に据えかねたのだろう。全員の順位を確認するという暴挙に出た。もちろん本人ではなく手下が動いたのだろうが。

その結果、1位が私だと確信を得たのだろう。そこからだ……私が学年中からイジメのターゲットにされたのは。


イジメの内容は通り一遍のものなので特筆するようなことはないが、私の見た目が幸いしたせいか暴行や強姦にまで発展することはなかった。


どうせ高校に入ったら縁も切れるだろうと放置していたら……このような進学校に入学したのが私だけでなく、彼女とその配下の四人だった……

彼女本人はともかく他の四人は一体どうやって?


そこで危機感を覚えた私はようやくママに相談をしたのだった。しかし依然としてイジメは続いている……




「ってわけで大爆笑だったんだぜ?」


「九狼君って友達多いんだね。」


しまった。あまりにも非日常な出来事が起こったせいで九狼君の話をほとんど聞いてなかった。確か何人かでどこかに行ってトラブルに巻き込まれたけど九狼君の活躍でことなきを得た話だ。


「もう駅に着いちまったな。どこかでお茶でもしていかないか?」


「私、裸足だから。RINEラインだけ交換しよう。」


私だってスマホぐらい持ってる。同級生の男の子とライン交換なんて初めてだけど……


「静香のラインかよ。きっと俺だけだな。誰にも教えるなよ? じゃあな!」


「うん。また明日。」


楽しいな。この罰ゲームがいつまで続くのか分からないけど、その日まではこんな気持ちが……


そして私はタクシーに乗り自宅へと向かった。

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