41話「お呼ばれ」
あれから、金曜日まで放課後の勉強会は続いた。
おかげで、今回のテストに向けて過去一番の準備が出来た。
そしてもう一つ、やっぱり山田さんはめちゃくちゃ頭が良かった。
これは俺も学年一位をキープ出来るか怪しくなってきたなと思い、この土日も継続して勉強する事を決心した。
「……だったら、土曜日うちでやらない?」
何気なく俺は土日も勉強する事を伝えると、山田さんからまさかの提案があった。
土曜日、勉強するならうちでやらないかと誘ってくれているのだ。
田中さんは、二つ返事で行く事を決めると、山田さんの家に行ける事に大喜びしていた。
俺としても、特に断る理由もないし、何より休日も山田さんに会えるのが嬉しかったから誘いを受けることにした。
こうして、俺達は土曜日山田さんの家で勉強会する事になった。
◇
土曜日。
時間は昼の十三時を少し過ぎた頃、俺は昼御飯を食べて支度を終えると山田さんの家へと向かった。
歩いて十分ぐらいの距離にある山田さんの家へと着くと、俺はそのまま呼び鈴を鳴らした。
そして「いらっしゃい」と招き入れられると、そのままいつものリビングへと通された。
リビングへ入ると、そこには既に田中さんがいた。
「あ、太郎くん来た! わー! 私服初めて見ちゃった!」
俺の私服姿にはしゃぐ田中さん。
確かに、私服で会うことなんてこれまで一度も無かった。
だから俺からしても、私服を着てる田中さんはとても印象的だった。
ノースリーブのトップスに、カーキのワイドパンツを合わせており、今風なオシャレなファッションをしていた。
制服姿より少し大人びて見え、そんないつもと違う田中さんの姿に俺は少しドキドキしてしまった。
山田さんはと言うと、今日は家での勉強会のため、Tシャツにジャージ生地のパンツとラフな服装をしていた。
しかし、それだけでもスタイルの良さが際立っており、別次元の存在に思えた。
それは田中さんも同じようで、「足長くていいなぁ」と山田さんを見ながら羨ましそうに呟いていた。
山田さんが全員分の麦茶とお菓子の入った箱を用意してくれたところで、早速勉強会を始める事となった。
◇
月曜日から毎日やってきた勉強会のおかげで、全科目一通り既に復習は終えている。
そのため、今日はそれぞれ苦手なところを克服するための時間に当てた。
田中さんはやっぱり数学が苦手なようだったけれど、勉強会の中で公式もちゃんと覚えたようで、自分で難しい問題も最後まで解ききれるようになっていた。
この一週間の成果は、かけた時間の分ちゃんと結果として現れてる事がまたやる気に繋がっていた。
山田さんはというと、どうやら一番物理が苦手なようで、珍しく一つの問題に苦戦しているようだった。
確かにその問題は難しいよねと思いながら、俺は俺で苦手な国語の振り返りをしていた。
「ねぇ太郎くん、ここなんだけどね?」
すると山田さんから、珍しく俺に質問してきた。
「なんでこういう答えになるのかよく分からないんだけど、分かるかな?」
「どれ? あー、そこはね――」
と、俺は極力分かりやすさを意識しながら丁寧に説明した。
すると、山田さんも腑に落ちたようで「なるほど」と呟くと、嬉しそうにありがとうと言った。
その顔がとても可愛らしくて、俺は思わず顔が赤くなった。
「むー、ねぇ太郎くん! 私もここが分からないんだけどっ!」
そんな俺と山田さんのやり取りを見ていたのか、田中さんは張り合うようにハイハイと手を挙げながら質問してきた。
そんな感じで、互いに質問し合いながら勉強しているとあっという間に外は夕方になっていた。
「もうこんな時間か」
「本当だね! あっという間だ!」
「そうだね」
そろそろ夕飯時な時間になっていたため、一旦勉強会は休憩にする事にした。
「ご飯どうする? この辺ファミレスとかあったっけ?」
「良かったら作るよ?」
「え? 華ちゃん作ってくれるの? えー食べたい食べたい!」
山田さんの提案に、田中さんは目を輝かせて食べたいとはしゃいでいた。
「太郎くんも、いいかな?」
「うん、華子さんがいいなら食べたいな」
俺の返事を聞くと、山田さんは少し頬をピンク色に染めながら立ち上がり、そのままキッチンへと向かった。
「私も手伝うよー!」と、山田さんのあとを追って田中さんも楽しそうにキッチンへと向かった。
こうして美少女二人がキッチンで料理する様は、とても絵になっていた。
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