告白
小作人
第1話
『告白』
この気持ちを伝えたらこの関係が壊れてしまう……。そんな恐怖とは裏腹に、気持ちを伝えられないもどかしさもまた僕を苦しめていた。だが、そんな僕にもついにその日が来た。手紙で呼び出すと言う古典的な方法だけど、これが今の僕の精一杯だ。指定場所で待っていると、うつむきながらその子は現れた。
ドキドキと胸が高鳴る。「ごめんね、突然呼び出して」噛まないように慎重に話すと「ううん」と彼女は大きく首を振って答える。このちょっと大袈裟な素振りがまた可愛らしいのだ。2人の間にしばしの沈黙が訪れる。シミュレーションは何度もしてきたのに、緊張でうまく言葉がまとまらない。だけど、このまま黙っていても何も始まらない。僕は勇気を出して言葉を紡ぐ。「あなたの事が好きです。僕と付き合ってくだひゃい!」盛大に噛んだ。人生で噛んではならないシチュエーショントップ3に入るであろうこの場面で噛んでしまった。しかし本人はそれどころの話ではなく、胸が痛むほど鼓動が高鳴り、頭も熱くなる。
そしてそれを聞いた彼女は、くすっと笑う。その笑顔に期待が大きくなる……「ごめんなさい」その声は小さいはずなのに、頭の中に響き、なかなか消える事はなかった。さっきまで熱かった頭が嘘のように冷たくなる。覚悟はしていた、していたはずなのに現実を受け入れるのが怖かった。震える手を押さえ、涙を堪えて逃げ出そうとした瞬間……「ごめんなさい。あなた事が本当に好きで、私から告白したかったの……《ルビを入力…》ずっと好きでした、私と付き合ってもらえますか?」その時の彼女はとても嬉しそうで、そしてとても可愛かった。悲しいわけではない、ずっと好きだった人が、僕を好きでいてくれたんだ。なのに、なのに、さっきまで堪えていた涙が一気に溢れ出した。「じゃあ、これから……」涙を拭きながら返事をする。「「よろしくね」」重なった2人の声は、この世のどんな音色よりも綺麗だった。
非リアの覗き見日記から抜粋
告白 小作人 @Yuya_kosakunin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます