夜空に向かい、想うのは
枝咲
第1話 その子が見つめるのは
「ねぇひろ。きょうもおそら、みにいこ!」
「はいはい、まだそとあかるいから。もうちょと、まってね」
「え〜もういちばんぼしあるよ?」
「でもせいざになるまで、じかんかかるから。いま、そとさむいし。かぜ、ひいちゃう」
やがて、空には数多な星が広がり。
双子は家の広く望遠鏡があるベランダに、2人並んで座る。
「ねぇひろ!ふたござっていうのどれ?」
「あれが、ふゆのだいさんかくって、いってね。そのうえにある、ほしたちをつなげるとふたござになるの。」
「へぇー!でもなんか、ひとつはくらくて。もうひとつはなんかあるいね」
「えっと、くらいほうがお兄ちゃんで。あかるいほうが、おとうとなんだ」
「わたしたちと、おなじだね!」
「…そうだね」
「でもね、わたしはあかるくてげんきだねってよくいわれるけど。ひろはしずかだけど、ほしをみてるときはおなじくらいあかるくってキラキラしてるよ!」
「……!」
「……ぼくね。ゆめがあるんだ、大きくなったら、おそらにいきたい!ほしをもっとちかくでみたいんだ」
「うちゅうひこうしになるの?」
「…なれたら、いいな」
「いっぱいおうえんするね!わたしはおほしさま、くわしくないけど。これからもいっぱいおしえてほしい!」
「うん!」
玲奈は知らなかった、ひろの生まれた時から定められた寿命を。
玲奈は誰よりもひろを信じていた。
ずっと病気がちの兄はきっと大きくなれば、元気になり立派な宇宙飛行士になっていると。
◇◇
あれから5年が過ぎた。
玲奈は今日も星を眺めながら、物思いにふけっている。5年も経っているはずなのに、玲奈の頭の中では今でもひろと共に星を眺めた日々は鮮明に映し出されていた。
(エリダヌス、オリオン、ぎょしゃ、うさぎ。今日は5つしか星座見つけられなかったな)
「もう冬なのに。今日も双子座、見つけられなかったよ。ひろ」
(……やっぱりひろがいないと、だめだよ私)
玲奈の瞳はひろが居なくなった5年前から、双子座の星を映し出さ無くなっていた。
片方を見つけることも出来なくなったのは、双子が欠けた悲しみからなのか。想いからなのか。
「あの子、ひろが居なくなってから毎日星を眺めてぶつぶつなにか言っているの。流石に心配だわ」
「懐かしいな、ひろは星が好きでよく眺めていたな。自分のことはいつも後回しにしてたのが、ある時から宇宙飛行士になりたいって言い出して……」
「ええ、あの時は本当に嬉しかった。毎日コツコツ勉強していた、誰よりも星が好きなひろならきっと夢を叶えられると。………信じていたわ」
「あぁ」
「ひろが居なくなってから。玲奈は探すように、何をしていても毎日必ず決まった時間に星を見に行くようになった。」
「ても、この間、ね。私に宇宙飛行士になりたいって、ひろと同じことを玲奈も言ってきた。その時のあの子がとても危うく、みえたの」
「…大丈夫だ。玲奈の拠り所がひろから星に一時的に変わっただけだ、きっと双子は俺達には分からないところでなにかあるのだろう」
「そうね。…今はあの子の成長を見守りましょう」
玲奈は今日も星を探す。たとえ双子座が永久的に見れなくても、空が雲がかっていても。星を探す。
……いつかあの空を目指して。
夜空に向かい、想うのは 枝咲 @mameeda12
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