恋した悪役令嬢、恋された言動がイケメンな二次元しか愛せない系なオタク男子の攻防戦
橋ノ本
第1話 悪役令嬢 御神本舞華
私立
この学園には有名人がいる。
学園に通う一人の女子生徒、その名も
なぜ彼女が有名なのか。
百人が百人振り向くような美少女だから?
確かに美少女だ。テレビでもめったに見かけないようなレベルの。白磁のような穢れを知らぬ透き通った白い肌、背中まで届く艶やかな黒髪は陽の光を反射してキラキラと輝いて見える。そしてまるで宝石のような煌めきをもつ双眸。美少女というのはこの少女のためにあるのではないかとさえ思えるほどのその容姿。
だが……それはほんの一因に過ぎない。
それでは彼女の家が由緒正しい名家であり、現代でも世界有数の企業であり、その一族の一人娘であるからだろうか……?
それさえも一因にしかならない。
そんな、ひとつでもあれば十分に超勝ち組認定されるような属性が霞んで見えるほどの圧倒的な属性が彼女にはあった。
学園だけではない、彼女はその属性を持って周辺地域で知らぬ者はいないほどの知名度を得たのだ。
それは上であげた属性……それらを全て消し去ってしまうほどの圧倒的なものだった。
…………悪い意味で。
○ ○ ○
春園学園、その正門前。
始業十五分前。
いつもきっちりその時間にそれはやってくる。
生徒十人は並んで通れる正門、そこに収まらないほどの長さをもつ漫画でしか見たことがないような真っ黒なリムジン。
校門前に停車したリムジンの運転席から燕尾服を着た初老の白髪の男性が降りてきて下駄箱までレッドカーペットを敷き詰める。
そして、後部座席のドアを開け頭を下げる。
そこから降り立つ美貌の少女。
そう、彼女が御神本舞華その人である。
あとに続くように彼女の荷物を持ち、もう一人の少女が降りてきた。
こちらも美少女ではあるのだが触れれば切られる……正にそんな雰囲気を持つ少女だ。
彼女は御神本舞華の従妹であり、従者でもある。
構内で御神本舞華の世話をするのは彼女なのだ。
どんな権力を使ったのか、二人は今までの人生で別のクラスになったことが無いらしい。
二人がリムジンから降り、下駄箱に向かう。
運転手の男性はリムジンのドアを閉め、彼女の歩く方向に頭を下げ続ける。
毎朝の光景だった。
「……靴が汚れてしまったわね」
上履きに履き替える前に御神本舞華が呟いた。
「ねえ、貴方」
すぐ近くで朝練が終わり、上履きに履き替えようとしていたサッカー部のエースで女子からの人気も高い
「な、なんでしょう……か?」
青空君は怯えたように返事を返した。
「靴が汚れてしまったの」
と、穏やかに告げる御神本舞華。
「じゃ、じゃあ何か拭くものを……」
青空君はポケットやカバンの中をまさぐった。
「…………こ、これでいいかな?」
部活用のカバンからスポーツタオルを取り出した。
「ふふふ、貴方の汗臭いそれでは私の靴がさらに汚れてしまうわ」
御神本舞華は可笑しそうに口元を隠し笑った。
「え、え~……っと…………」
青空君は困惑する。
そんな彼に笑顔を引っ込めた彼女は言い放った。
「そこに寝転びなさい」
そこに、その顔に冗談の色は無かった。
「………………はい」
青空君は抵抗することなくうつ伏せに寝転がった。
「はぁ~……朝から憂鬱ね」
寝転がった青空君の背中、その制服で靴の裏の汚れを拭った御神本舞華は陰鬱そうに呟いたのだった。
そう、彼女……御神本舞華は悪役令嬢だったのだ。
全ての良い属性を消し去るほどの。
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