8話 とある一日・前編





「む」

「え」

「ん~」

「……おいしい」


 夕食の席にて上から順に、親父殿、兄さん、妹、弟のセリフだ。


「これ、何……?」


 次兄さんが炒り豆をつつきながらそう言った。


「……? どうしたの?」

「いや、いつもより美味しいなって思ってさ。これ、バター?」


 姉さんがきょとんとした顔で尋ね、兄さんが疑問をはっきりと口にした。


「うん。古くなった生クリームもらったから、作ってみた。砂糖もないし」

「……へぇ」


 兄さんが呟いて、食事を再開させた。いつもよりスプーンの進みが早いのは、作った方としては嬉しい限りである。


「バター?」

「豆を炒ってる時に入れた、あれだよ」


 毎日安い炒り豆ばかりが食卓に並び飽き飽きしていたので、せめて風味を変えようとバターをあえたのだ。

 牛乳からだとあれこれ手順を踏む必要があるが、生クリームからならとりあえず振ってればできる。

 風の初級魔法を使えば楽なもんだった。


 おおむね好評だが、姉さんは『あれか~、ふ~ん、しっとりしてるけど、そんなに違うかなぁ』と、首を捻っていた。

 一緒に料理をするようになって――最近は親父殿が離れ、二人で料理をするようになった――気づいたことがある。

 姉さんの舌は、塩味の日々が苦にならないほどに残念だ。


「いや、全然違うだろ。なぁ、バターってまだあんのか?」

「うん、早めに使い切ろうと思ってるけど、まだ冷蔵庫にあるよ。明日の朝、パンにでも使おうかなって思ってる」


 質問に答えると、次兄さんの目がキラリーンと光った。ちなみに冷蔵庫は電気ではなく魔力で可動しています。


「……」


 いつもより早く食事を終えた弟が、物足りなそうに空になった皿を見つめていた。

 食事に関してはある程度余裕が出てきたが、余分に作れるほどではないのでおかわりは無い。

 なのでまだ残っている自分の炒り豆を半分ほど弟の皿に移した。

 ……こら妹、物欲しそうに見るんじゃありません。



 翌日の朝、予想通りではあるが冷蔵庫からバターが消えていた。

 朝食の席で話題に上げると、姉さん以外が目を逸らした。

 ……こいつら。



 ******



 道場で、親父殿と向かい合う。

 もう何度目になるかわからない立ち会いだ。

 だが一度でも当てれば勝利という条件を、未だ満たしてはいない。


 親父殿が作る無数の衝弾を、同数の衝裂斬で迎え撃つ。空飛ぶ斬撃は衝弾を切り裂いて、しかし親父殿に届くことなく力尽きるが、それで良い。

 魔力量は順調に上がっているが、それでも限りはあるし、それが枯渇するのは親父殿とは比較にならないほど早い。


 短期決戦を挑むのは絶対だが、魔力のひと雫として無駄にはできない。

 入り乱れる衝弾と衝裂斬。魔力の場が乱れ、魔力感知が難しくなっている。

 私が親父殿に優っている唯一の点がここだ。自ら鍛え上げた親父殿の魔力感知よりも、人知の外にいるナニカからもらった私の魔力感知は精度において優っている。


 場の魔力が乱れていると魔法は使えない。

 衝弾や身体活性のように内界の魔力を使う闘魔術と違い、魔法は外界の魔力に働きかけるものだ。

 だから行使する場の魔力の状態に左右されてしまうし、現状のように乱れきっていると発動そのものが難しくなってしまう。

 だが私の魔力感知ならば、その乱れているとされる状態を正確に把握できる。


「燃えろっ」


 一瞬の集中と言葉を挟んで、中級の火の魔法で親父殿を襲う。

 効果範囲を最大まで広げたそれは、親父殿の視界を完全に奪った。道場の床や天井にも及んでいるが、金満時代に買ったこの道場には高レベルの対魔、対物の防護壁が実装されている。

 魔法の発動と同時に、魔力を分割し三つの衝弾を作る。

 それらが三方向からカーブを描き、親父殿を狙う。

 そのタイミングで親父殿が木刀を一閃。

 ばかげた魔力のこもったそれが、炎を簡単に蹴散らした。

 親父殿が三つの衝弾を認めながら、しっかりと私を見すえた。


 知らず笑みを浮かべながら全身の魔力を増幅、活性化させて、私は親父殿向かって突っ込んでいく。

 三方向の衝弾は、着弾を待たず親父殿に撃ち落された。

 だがそれでいい。

 親父殿にはっきりと優っているのは魔力感知だけだが、単純な魔力操作の技術もある程度は近づいている。

 溜めた三つの衝弾を迎撃したため、今の親父殿はとっさに衝弾が作れない。他の技ならば使えるのだろうが、今のところ親父殿は衝弾以外の技は使わない。


 その間を逃さず全力で突進する私に対し、親父殿はその場から動かず待ち構える。

 間合いに入ったその瞬間に、親父殿の木刀が襲いかかる。

 それに合わせて、私は全力で衝弾を放った。


 ただの衝弾では躱される。

 多少体勢が乱れていようが、眼前の危険に対応できない親父殿ではない。

 放ったのは足の裏から。

 衝撃波による加速を求めて、私は足の裏で衝弾を破裂させた。


 親父殿の動きが、驚きのためか一瞬止まる。

 私は思いのほか加速したため、親父殿を通り過ぎそうになったが、かろうじて間に合い後頭部に一撃をくれてやった。

 人間の後頭部を木刀で殴るのは極めて危険な行為だが、私は五歳児で、衝弾とその反動への対処で魔力を使いきり、肉体の強化がされていない。

 対して親父殿は潤沢な魔力による防御膜があるのでノーダーメージだ。

 だとしてもようやくようやく――


「――僕の勝ちだ」


 着地に失敗したので仰向けに寝そべりながら、私はそう言った。



 ******



 勝った。

 初勝利だ。

 でも時間を置いて冷静に振り返ると、わりと微妙な勝利だった。


 まず衝弾を加速に利用した瞬間、親父殿は一瞬動きを止めた。

 あれは動けなかったのではなく、あの速度に反応して迎撃すると危険だから、反射で動きそうになる体を押さえ込んでいたと思い返される。

 さらにすり抜けざまに一撃与えたが、親父殿は魔力を後頭部に集めていた。

 それはつまりこちらの攻撃の線を見切っていたということで、たぶん避けようと思えば避けられたと思う。

 つまりはこの勝利は、ご祝儀で与えられたものという事だ。

 べつに腹は立たないが、満足もできないなぁ。


「疾空は、誰かに習ったのか?」


 私が使い切った魔力の回復に努めつつ今回の反省をしていると、親父殿がそう尋ねてきた。

 疾空とは衝弾を応用したアレのことだろうと当たりをつけて、首を横に振った。


「まあ、そうだろうな」


 親父殿はため息をついた。なんだよ。


「俺は今、片足でしかできんが……」


 そう言って、親父殿はその場でジャンプする。

 そして、何もない空中で片足ジャンプを繰り返す。空中ケンケンだ。

 片足オンリーなのでケンケンパができない。

 いや違う。凄いのはあれだ、魔力の制御だ。


 私のように全力で魔力を放ち、その反動も、力づくの強化や増幅で押さえ込んだりしていない。

 自分の体重を支えるのに十分な量だけを放ち、当然反動も地面を蹴る程度しか受けていない。

 実に綺麗な魔力制御だ。誰だ、魔力制御は近いレベルになったとか考えたのは。


 私も同じように空中でジャンプにトライしてみるが、衝弾は全方向に衝撃を放つ。それはバランスボールの上でケンケンするような不安定さで、親父殿のように垂直に飛び続けるということができない。

 右に左に飛び回りながら意地でも地面にはつかないなどと思ったが、十回くらいで回復しかけていた魔力が尽きてきたので、諦めた。

 そして着地に失敗して、道場の床をゴロゴロと転がった。


「疾空はかなり上位の闘魔術だ。今のお前には無理……な、はずなんだがな」


 よって来て、そう呟く親父殿。

 床を転がった私を心配してはくれませんか。そうですか。確かに受身はとったけど、結構痛かったんだよ?


「そうしょげるな。中級程度のギルドメンバーと、同程度の疾空はできていたぞ」


 え、いや、悔しかったわけじゃ……、まあ、いいか。


「とりあえず衝砲弾を教えよう。

 あとは地道に鍛錬を欠かさねば、すぐに俺がやった程度のことはできるようになる」


 そう言って親父殿は胸の前で両手を向かい合わせた。

 その間の空間に、衝弾をひとつ作った。

 それから手のひらで固めるように、衝弾をいじる。

 実際には魔力の膜で、一方向を除きコーティングしているのだと気付いた。


「では、行くぞ」


 ボンッ、と破裂させたその衝弾は、いや、衝砲弾はたしかにコーティングされていない一方向に衝撃波を噴出させた。

 正面で見ていた、私に向かって。


 ゴンっ、と、風圧に飛ばされた私は、後頭部を勢いよく打ち付けた。

 かなり痛かった。


「あ、すまん」


 ……。


「あー……、だ、大丈夫か? セージ」


 ふふふ。


「ええ、大丈夫です。では早速試してみますので、親父殿も良く見ててください。いえ、そんなに離れてはよく見えません。もっと近くに。ははは。なんで逃げるんですか親父殿。近くに来いって言ってるじゃないですか。ははははははは」

「悪かったセージ、でもやるとは言ったじゃないか。お前なら防御ぐらい出来ただろう」


 集中してたんだよ。


「ははは、親父殿だって防御できるじゃないですか。ははは。なんで逃げるんですか」

「なんか怖いんだよっ!」


 あははははははははははははははっ。



 しばらく親父殿と追いかけっこを楽しんだ。



 ******



 衝砲弾はもちろん会得した。

 衝弾はもともと圧縮した魔力を膜で覆うものなので、もう一枚追加で穴の開いた膜を用意すればいいだけだった。そんな訳でそれほど難しくはない。

 むしろ線状に高密度の圧縮が必要な衝裂斬のほうが難しいくらいだった。

 ちなみに衝砲弾の威力は衝弾以上、衝裂斬以下。親父殿相手には使う機会はなさそうだ。

 衝弾よりも手間がかかるし、破裂させた際に発生する衝撃も一方向なので外したときには牽制にも使えないし。



 さて親父殿に初勝利したことで、次の模擬戦からは難易度がアップする。

 親父殿が動くようになる。攻撃の威力を上げてくる。

 そして私には低威力の闘魔術の禁止が言い渡された。

 低威力なら手数も増えるし速度も上がる。

 速度が上がるのに威力が落ちるあたりはふぁんたじぃだが、さて置き、とにかく一発入れるのが目的だったのは今朝までの話だ。

 言われた通り、今後は威力重視の衝弾と衝裂斬で攻めよう。



 朝の訓練と朝食を終えて、外に出る。

 出かけに兄さんに声をかけるのは忘れない。


「お土産期待してるよ」

「うん、土産話を持って帰るよ」

「ああ、みんなが笑い転げるようなのを頼むよ」


 ……日に日に兄さんが手ごわくなっていくなぁ。



 もう歩きなれた街並みを通って、出勤する。

 練習がてら疾空を試したら、通行人にぶつかりそうになったので自重した。通勤途中でストリートファイトする趣味はない。まあ通勤途中でなくってもしないけど。


「おはよう、セージ君。毎日頑張ってるね」


 今日の勤め先で雇い主のおばちゃんに挨拶すると、そう返された。

 そして『はい、今朝の分』と、硬貨五枚をもらった。

 毎朝の掃除は今も続けている。訓練前の一時間ぐらいだ。

 飲食店の裏口は、毎朝生ごみが散乱していたが、今はそうでもない。

 毎日掃除して綺麗にしているところを汚すのは嫌なのか、浮浪者も別の飲食店街を荒らしているらしい。

 とはいえ小動物や酔っ払いが汚すので、掃除自体は無駄にならない。

 さらに浮浪者を平和的に追い払ってくれたなんて噂も立ち、十二件のお店の掃除で一日硬貨五枚を手に入れる契約にこぎつけた。

 ちなみに契約相手はこの辺の商店が集まった商会。商会はいくつかあって、うちの商会の代表は『他の商会の飲食店は売り上げが下がってるぜ』と、浮浪者の動きと他の商会のデータを見ながら黒い笑みを浮かべていた。


 今日の仕事は雑貨屋で掃除と商品棚の整理だ。

 レジは任されてない。計算ができないとかお金をちょろまかすとかは疑われてないが、お客さんの中には手癖の悪いのもいるし気の短いのもいる。

 なので、子供には任せられないということだった。


 掃除はわりと簡単に終わる。

 魔法という便利なファンタジースキルを持っているからだ。魔法の使用には精神集中が必要だが、パソコンをいじりつつ部下に指示を出し手元の報告書にサインをする前世の経験が役に立っている。

 いくらかの練習は必要だったが、魔法の集中と同時に他の行動も出来るようになったのだ。

 中級魔法だとまだ無理だが、練習を積めばできるようになるだろう。

 さらには魔力感知のレベルが高いため、無詠唱や高速で魔法を組み上げるなんてのもできるようになっているので、姉さんにはチートずるいと言われている。


 ともかく箒で履くのと同時に風の初級魔法でホコリを集めて、雑巾がけ。

 湿った火と風の混合魔法で乾かして、さくっと掃除を終わらせた。

 それから売れていった商品を倉庫から棚に補充して、仕事は終わりだ。ついでに倉庫の在庫状況をメモに取っておく。

 これは別に頼まれていないのだが、私は役に立つというアピールがてらサービスでやっておいた。

 仕事というのは慣れれば慣れるほどに早くなっていくもので、今日の担当分を終わらせても一時間以上余ってしまった。


「よう、セージ。ヒマそうだな」


 見回りにでも来たのか、商会の代表が現れて声をかけてきた。


「ええ。なにか仕事はありますか?」

「いっちょまえなこと言う前に、与えられた仕事をちゃんとやれって、ウチの若い奴には言うんだがな……。

 いいさ。仕事が欲しいなら来いよ。たしか肉屋の方が人手不足だったはずだ。洗いもんだけでもやってやれば喜ぶだろ」


 肉屋、と言うのは惣菜や弁当の販売もやっている精肉店である。昼前には精肉よりも弁当などの方がよく売れて調理場がラッシュアワーする。

 たしかに子供の手も借りたいところだろう。


「いいですけど、僕は十二時までしか働けないですよ」


 弁当などを求めた客入りのピークは昼過ぎまで続く。途中で抜けるさいに恨み言を言われるのは勘弁してもらいたい。


「ああ、わかってる。先に今日の分渡しとくぜ。これなら気兼ねなく抜けられるだろ」


 そう言って、代表は硬貨五枚を渡してきた。契約上の日給は硬貨四枚なので、一枚が精肉店で働く分だろう。できればお肉を現物支給して欲しかった。



 ◆◆◆◆◆◆



 十二時を十分ほど過ぎたところで、色々とおかしな子供が『そろそろ帰りますね』と、口にした。

 子供の名前はセイジェンド。

 あの・・ジオレインが拾って育てている天才児。あるいは鬼子と呼ぶほうが正しいかと、そのセージを雇っている商会の代表は思った。


 初めて会ったのは半年ぐらい前だったか、商会傘下の飲食店がじわりじわりと収益を上げてきた。上昇率としては特筆するほどではなかったが、安定して上がっていくのが気になって店長に話を聞いてみたところ紹介されたのがきっかけだ。


 最初は良い印象を持っていなかった。

 身奇麗にはしていたが、着ている服はくたびれていて所々ほつれているし、子供にしてはやけに愛想笑いが自然だった。

 仕事を探している子供というのは食い詰めているのがセオリーだが、その点セージの目には飢えというものが足りていないと感じた。

 或いはまるで成熟した大人のように、自分の飢餓感よくぼうを飼い慣らしているように感じた。


 ちぐはぐな印象だが、ませた子供というのはいるものだ。特にろくな大人がいないこの守護都市では、子供が子供らしくいられる時間が短い。

 気に入らないが、そういうもの程よく視界に入ってくるものだ。


 飲食店の店長に頼まれたこともあって、渋々雇うことにしたが、しかしこれがなかなかの拾い物だった。

 店長は頭の良い子だと言っていたが、それは随分と控えめな評価だった。

 読み書きに算術も大人並みにできる。さらに世慣れしていて接客も問題なくこなしていた。

 いや、あの・・ジオレインの子供に万が一があってはいけないので、なるべく接客はさせないようにしているが。

 さらに目端も利き、今日は雑貨店で在庫の少ないものを書き出して渡してきた。


 良くできた子供だが、良く出来すぎているとも思う。

 一度、自分が給料以上の仕事をしているのをどう思うのかと、聞いてみた。


「まあ……、もらった給料よりも働かないと、生産性がないじゃないですか」


 代表が首をかしげると、セージは少し考え込んだ後、言葉を補った。


「うーん……。仕事した利益ともらった給料を比べて、給料の方が多いってのが続くと、解雇されて当たり前だって思うんですよね。

 そりゃあ長く続けた貢献度とか、そういうのは加味しないとって、思いますけど。

 だって雇ってる側からしたら、その人は赤字を出し続けてるわけでしょ。将来性がある新人とか、プライベートがごたついてるとか、色々あるので簡単に首を切ろうとかは良くないと思います。

 でもそういうのは置いておいて、労働者の立場としては雇って良かったって思われるようにはしたいですよね」


 代表は口をへの字に曲げた。思い返してみれば、随分と雇用者に都合の良い事を言うと思った。

 続けて言った、『お給料上げてくれるのなら、もちろん大歓迎ですけどね』と上目遣いの笑顔に、ついついその通りにしてしまった自分を思い出して、さらに口元に苦い笑みになった。

 だがセージの口にした言葉は本心だったのだろう。媚びている様子や、顔色を窺う様子は感じなかった。


「働く側のプライドか……」


 呟いて、なんとなくバカバカしく感じて、笑った。

 いくら大人びていても、所詮は子供だ。大人のように支える家族もしがらみもないから、綺麗事を言える。

 なにせあの英雄ジオレインの息子でもある。お金に不自由した事など無いのだろう。

 だからお金にしがみつく様な執着心も、ギラついた飢えもみえてこない。


 ここでの仕事も、訓練や社会勉強の側面が強いに違いない。

 実際、仕事中は無詠唱の魔法を鼻歌交じりに使いながら仕事をしているほどだ。

 それだけの才能を持っていて本当にお金に困っているのならば、さっさと騎士養成校に入って奨学金でも貰っているだろうし。


 精肉店で働く年配の女性からコロッケをせしめて、セージは帰り支度をすませた。

 代表は埒もない思考を止め、最後にたまには子供らしく菓子や玩具でもねだればいいのにと思って、財布を取り出した。





 彼女の名前はミルク・タイガ。

 若くして商会の代表を務める口の悪い敏腕経営者。

 最近、子供が欲しいなー、などと思っている三十二歳独身乙女だ。




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