第40話 真の勇者は我が国にいる!
「真の勇者を見つけ出すことも確かに大事だ」
イジューイ王はそう前置きし、こう続けた。
「だが、この広い世界の中からたった一人の真の勇者を見つけ出すのは容易ではない。我々にそんな時間は無い。今、優先すべきことは調査隊を結成し魔王の侵攻を食い止める事だ」
イジューイ王はそう宣言した。
彼は一人で物事を決めようとしていた。
「し、しかし……それでは、いずれ魔王を倒すことは出来ず、世界は邪悪なモンスターに支配されてしまう」
紫色のローブに身を包んだタマム王が、長い顎髭をせわしなく触りながら、訴える。
彼の祖先は魔女狩で迫害された、魔法が仕えるだけの者たちだった。
彼ら一族は何かに支配されることを、本能的に拒む様に出来ているのだろう。
「勇者の側からこちらに来てもらう様な仕組みを作ればいいのではないか? そうすれば我々は待っているだけでよい」
スーミカ王女が桃色の鎧に付いた埃を払いながら、そう言った。
「なるほどー。例えば、職業が勇者な人は、名乗り出てくれればお金をあげるとかいいかもね」
セレクト王は両手を頭の後ろにあて、椅子にのけぞりながらそう言った。
「金で解決とは商人らしい考え方だな」
イジューイ王は感心した様にセレクト王を褒めた。
「いやいや、それほどでも。真の勇者を見つけた者には賞金をあげるってのもいいな」
会議に参加したメンバーからは次々とアイディアが出て来た。
そんな中、シロウだけは黙ったままだった。
(まずい、まずいぞ……他国に先に真の勇者を見つけられては我が国の立場はますます弱くなる)
この世界の暗黙のルールとして、その国に住む者は、その国の王家に従うというルールがある。
例えば、真の勇者がラインハルホに住んでいる場合、その者はラインハルホの一族として召し抱えられる。
このルールは有能な人材の流出を防ぐという意味で、5大王の間で破ってはいけないルールとして存在している。
シロウは思わず立ち上がり、こう叫んでいた。
「各国の王よ、聞いてくれ!」
周囲がざわつく。
今まで沈黙を破っていた、最下位の王が何か発言しようとしている。
ラインハルホ一族の中では威張っている彼も、このメンバーの中では底辺だった。
彼は緊張でもどしそうになるのを堪え、言い放った。
「実は我が国に真の勇者がいる」
つづく
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