第38話 不平等条約

「各国にて調査団を結成すること。そして、我が国から武器を購入すること。同意する者は手を上げよ」


 イジューイ王が各国の王に向かって告げた。

 各王の表情はそれぞれ異なるものだった。

 商人の国、オラクル王は乗り気の様だ。

 オーバーザ・サン王国のスーミカ王女は鉄仮面でその表情は分からない。

 ブラックピーチ王国のタマム王は戸惑いながら、周囲に合わせる様に手を上げている。

 シロウ以外の者は手を上げた。

 シロウはどうするか迷っていた。


「どうした? シロウ王よ」


 イジューイ王が余裕の表情で問い掛ける。


「調査団を結成したくても、我が国はそのための余裕……つまり財力がありません」


 苦渋の末の発言だった。

 ラインハルホ王国は財政危機に瀕しており、国力は衰退の一途を辿っていた。

 それに、この各国で調査団を結成し、持ち回りで暗黒大陸に出向くというのはシロウにとって受け入れがたいものだった。

 だが、その理由は言いたくても言えなかった。

 言えば、イジューイ王をはじめとしたジャンク王国やその同盟国に歯向かうことになる。


「シロウ王。そのための資金を貸し付けることは出来るけど?」


 頭にターバンを巻いた15歳の子供、セレクト王が24歳の大人であるシロウに陽気な感じで提案して来た。


(くっ……こいつからだけは金を借りたくない。利子が高すぎる)


 一介の金貸しから、商売で成り上がってきたセレクト王の父親は金にうるさかった。

 そこは息子であるセレクト王にもしっかり受け継がれていた。

 彼はギルドや店や村や街そして、国に至るまで支援と称して金を貸し付けていた。

 高い利子をつけて。


「セレクト王、ありがたいがそれは辞退する」


 シロウは丁重に断った。


「シロウ王、ならば、そなたの国は調査団の結成には参加しないということか?」


 スーミカ王女が問い掛ける。

 彼女の甲高い声は、鉄仮面の下から発せられているせいかくぐもっている。

 シロウは周囲の視線を冷たく感じた。


「困ったな。これから各国で統制を取りモンスターに立ち向かわなければならないのに……」


 イジューイ王が芝居っぽく大袈裟にため息をついた。

 シロウに対して失望したかの様に。

 そして、


「ならば、我が国がラインハルホに派遣している守護兵団を撤退させるが、それでも良いか」


 最後通牒の様に告げた。


「そ、それは……」


 それは、まずい。

 ラインハルホ王国は四方を山で囲まれていて、モンスターの脅威に他国に比べ特に晒されていた。

 ジャンク王国の守護兵団が国境を守ることで、何とか平穏を保てているからだ。


つづく

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