第15話 囚われの美少女(元妹)
「サクラコ様、お食事です」
衛兵の声で我に返る。
「そこに置いておいて」
「はい」
ラインハルホ城の地下深くにある牢獄。
そこに私は一ヶ月前から囚われの身だった。
『一族に歯向かった罪』
それが私の罪状であり、今、その罰を受けている。
私は鉄格子に囲まれ、冷たい石畳の上で、窓が無い昼も夜も分からないじめじめした場所で日々を過ごしている。
牢獄が結界で覆われているせいか微かに紫色だ。
私はある人のことを想っていた。
「ヒロアキ……」
◇
「サクラコ、待ってよ。そっちは危ないよ」
「大丈夫。あっ!」
◇
ヒロアキの右頬には傷がある。
それは、私が10歳の頃……
城の裏山に冒険ごっこをしに行った時のことだ。
スライムに襲われそうになった私を、ヒロアキが守ってくれた時に出来たものだ。
◇
「ヒロアキ、ごめんなさい」
「大丈夫。サクラコは僕の大事な妹だから」
◇
あの傷をもう一度、撫でてあげたい。
牢屋に閉じ込められたが、今でも私は自分の行動が間違えだとは思っていない。
今日は月一回、領主が集まる担当者報告会議だ。
貧乏領地を与えられたヒロアキもこのラインハルホ城にいるはず。
今すぐにでもこの鉄格子をこじ開け、結界を切り裂き、会いに行きたい。
「なっ……なにをっ……」
衛兵が驚き、後ずさりする。
私が詠唱し始めたのを警戒している。
「いでよ、地獄の業火。サモン・サクラコ・イフリート」
……だが、なにも現れない。
ヨシアキの掛けられた魔法により、召喚スキルが封じられている。
「ふぅ……」
見張りの衛兵が安心したのか、息を吐いた。
◇
「8割も金を払うつもりはありません!」
「貴様、再び我が一族に歯向かうか!」
シロウが玉座から立ち上がった。
彼は立てかけてあるフレイムソードを手に取った。
僕は恐怖で足がすくむ。
だが、ここは譲れない。
僕は一ヶ月前から今日までのことを思い出した。
一ヶ月前。
「ひとまず、この荒れ地をどうするかだな」
一晩明け、地平線から太陽が昇って来ている。
僕は何とか気持ちを立て直しこの荒れ地、否、貧乏領地を再興させることにした。
まず、ここを開拓することで財をなし、僕自身も強くなり、あの一族に復讐しなければ。
つづく
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