第3話絶望した勇者は
勇者の心がどす黒い感情に支配された瞬間。
目の前にいる下品極まりない男達の男としての尊厳が無くなった。否、正確に言うならば、床に落ちたのである。
「?えっ?う、…うわぁーー!!」
男達もようやく気づいたようだ。
のたうち回って苦しんでいる。
「いッだい、いだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだいいだい……!!」
自業自得であろう。女の尊厳を踏みにじろうとしたのだから。
「ねぇ、人の尊厳を踏みにじろうとした癖に、自分の尊厳を踏みにじられる覚悟が無いのはおかしくない?」
そして、もう一人の男、スカサハに目を向ける。
「な、な…!貴様、今、自分が何をしたのか分かっているのか!?勇者だろうが!!」
何を言い出すかと思えば…。
「私は勇者だった。」
でも、今は違う。下品極まりない男達に犯されそうになった時、私の中で何かがバラバラと崩れ落ちた。
「私はもう、
「き、貴様!!人間を裏切るというのか!?」
「最初に裏切ったのは人間。もう、私には、人間を救う義理は無い。」
「だが、お前も人間だろう!裏切れば、お前の親は処刑されるぞ!さあ、戻るなら今のうちだ!」
人間は本当に愚かだ。
「私は戻らない。」
私の親は、人間に殺された。
「親を見捨てるのか!?この人でなし!!」
「私の親は、もう死んだ。人間に殺された。」
「ッ…!味方のフリをしていたのか!?」
「いいえ。」
味方のフリなどしていない。していたのは、人間側だった。
「私は、さっきまでは貴方達人間の味方だった。」
そう、さっきまでは。人間は憎かったけれど、もしかしたら、悪い人間ばかりではないのかもしれない。そう思って人間を信じた結果がこれだ。良い人間などいない、というのは語弊があるだろうか。人間は、自分に被害が及ばなければ、なおかつ、自分に利益をもたらす相手の前では善人になる。つまり、人間はどこまでも自分勝手で、利己的な生物なのだ。
「さようなら。」
別れを告げる。
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