第50話 忌み子

「さぁ入ってくれ!」

「お、お邪魔しまーす」


 テンに連れられ俺達は村の中にある小さな家に入った。


「なぁここがあんたの家なのか?」


 家に着くなりどかっと椅子に座ったアロウがテンにそう訊ねた。


「うんそうだよ」

「親はいないのか?」

「……うん」


 親がいない事を訊ねられたテンは露骨に答えにくそうな顔を浮かべた。

 これは何か訳ありだな。


「おいアロウその辺にしとけよ、村に入れたのもこの子のお陰なんだし、何かお礼もしないと」

「す、すみませんご主人」


 俺がそう言うとアロウは静かになった。

 さてお礼は何がいいかな、とりあえずご飯でも奢ればいいか。


「テンさんお腹減ってたりする?良かったらご飯でも食べに行かない?」

「え、ああそうだね、近くによく行く酒場があるからそこに行くのもいいかも」

「おうおうガキが酒場とは、意外とこいつ舐めたガキかもですよご主人」

「アロウうるさい、了解!それじゃその酒場にしよっか」

「うん、でも酒場が開くまで結構時間あるからここでゆっくりお話しでもしない?」

「別にいいけど」


 そういえばさっきも、ゆっくり話を聞きたいとか言ってたな。

 マリギュラとの約束ともあるしあまり変なこと言わないようにしないとな。


「ありがとう、じゃあ聞くけどあんたら本当は何者?」

「へ?し、商人だけど」

「いや違うね、あんたは確かに商人の格好をしているけど話し方が全然違う、それにあそこにいるメイドの人もなんかメイドっぽくないし、ねぇ本当は何者?」


 うーん困ったなぁ、ここまで言われて商人ですって突き通すのもアレだしなぁ。

 なんかうまく誤魔化せないだろうか。


「詮索が多い子供ねあんた」

「ムーファ!」

「黙って聞いてれば私達のことばかり聞いてきて、たしかに私達は怪しいわ、でもあんたも同じくらい怪しいわよ」

「……」

「ちょっムーファ言い過ぎだぞ」


 でもナイスだ。

 たしかにこの子からすれば俺達は怪しく見えるだろう、でもそんな俺達の事を匿おうとするこの子も十分怪しい。

 

「俺は……訳あってこの村で腫れ物みたいに扱われてる、なんでもどっかの偉いやつの忌み子らしい」

「忌み子?」

「望まれない子みたいなもんよ」


 ミリオンが言葉の意味をわかってなさそうに聞き返していたので、ムーファが補足をしてくれた。

 忌み子か……なんだろう気になるな。 


「どこの家の忌み子かはわからないの?」

「わからない……でも結構偉い人みたいで、村のみんなはそんな人の子の俺にビビってる」


 偉い人か……誰だろうな。

 貴族か?王族か?それとも他国の有力者?なんにせよもしかしたらこの子は将来的に使えるかもな。


「オルクス様すこしいいですか?」


 テンについて色々考えているとスザクが小さな声で俺に話しかけてきた。


「どしたスザク?」

「外で話したい事があります」

「わかった」


 テンにはちょっと風に当たってくると言って俺とスザクは外に出た。


「それで話ってなんだ?」

「オルクス様、私はファルコの事が心配なので一足早くファルコの下へ向かって構わないでしょうか?」

「あー、それもそうだな!」


 まずいファルコの事すっかり忘れてた。

 今回の第一目標はファルコの応援だもんな、ついついここに長いしようとしてしまった。

 だけどもテンについてもう少し知っておきたいしなぁ。

 うーん、ここは二手に分かれるのもありかもだな。

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