第36話 13魔の実力


「千手さん、我々の仕事は敵大将の討伐でしたっけ?」

「ああそうだマリギュラ、ただオルクス様曰く敵の中にただ強いだけではない輩もいるみたいだから警戒していくぞ」

「了解」


 魔人軍3万に対し、こちらの兵力はスカルマン一万五千である。

 数の上で倍だがマリギュラと千手は全く負けると思ってはいなかった。

 

「千手!マリギュラ!」

「スザクか」


 そんな2人の元へ空からスザクが降りてきた。


「敵の大将は七獄の魔人アランテっていう奴よ」

「アランテ、強そうなのか?」


 千手はそうスザクに訊ねた。


「うーん、強さ的にはアロウと同じくらいかな」

「わかった、それなら勝機はあるな」


 オルクス13魔の強さの序列は曖昧である。

 その理由は特定の条件下において最大の力を発揮する者や、レベルとは関係なく能力そのものが強力な者などがいるためである。

 故にアロウと同等と言われても千手には焦りはなかった。


「確かに強さがアロウと同じだと結構大敵ではあるが、マリギュラと私の連携なら崩せるだろう」

「ですね」

「そういうわけだからスザク、スカルマン達の指揮は任せるぞ」

「はいはい」


 そうして千手はスザクにスカルマン達を任せてマリギュラと共に別行動を開始した。


「情報だとアランテは第一陣の先頭にいるらしい、やれるかマリギュラ?」

「任せてください」


 マリギュラは機械人形である。

 腕には仕込み鎖、足には替刃式の剣、そして口からは麻酔針などを出せる。

 そしてマリギュラの1番の強みは驚異的なアビリティ耐性であり、これを活かした戦法こそがマリギュラの持ち味である。


「マリギュラ、やり方としてはお前がまず敵を捕らえるそして私がお前ごとそいつを"発火糸"で焼き貫く、それでいいか?」

「了解です、それでいきましょまう」


 アビリティ耐性とは、アビリティによるダメージの通り易さの数値である。

 耐久値が高ければ高いほど、アビリティによるダメージの量は減少する。

 その為高耐久のマリギュラは並のアビリティ程度では傷がつかない。


「はじめにスザク達とぶつからせて、そこでできた隙を突いてアランテを捕らえよう」

「了解です」



 2人はそう言うと、味方側と魔人側の間の茂みに身を隠した。


「やってやれスカルマン達!」

「貴様ら!魔人の強さ思いしらせてやれ!」

「始まったな」


 それから程なくしてオルクス陣営と魔人陣営は激しくぶつかった。

 数の差はあるが両陣営の力は拮抗していた。


「よし今だマリギュラ!」

「かしこまりました、アビリティ発動ー捕縛鎖ホバクサ


 アビリティー捕縛鎖、消費魔力250で効果は定めた対象を追尾して捕縛するというものである。

 

「な、なんだこれは……」

「捕まえました」

「よくやった、こっちまで引き寄せてくれ」


 群衆の合間を縫ってきた鎖にアランテはまったく反応することができなかった。

 捕らえるとすぐにマリギュラは、鎖を引き寄せた。


「ぬ、なんだこれ身体が引き寄せられる!」


 そのままアランテは千手達のいる茂みの方へ引き寄せられた。


「な、何者だ貴様らは!」


 茂みの奥にいたマリギャラと千手を見てアランテはそう言った。


「どうも敵でございます」

「は?」


 そう言ってマリギュラはアランテを取り押さえた。


「そのまま押さえてろマリギュラ!アビリティ発動ー発火糸」

「や、やめろぉ!」


 そして千手の発火糸はアランテの体を貫いた。

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る