第27話 七獄の魔人
「どうだオルクス!これではさっきのように迅雷で逃げ出す事はできないだろ!」
「くっ」
先生の言う通り、これではいくら迅雷を使っても逃げる事はできないだろう。
でも別に逃げる気はないし、先生と戦う気もない。
そう俺はただ天井を吹っ飛ばすだけだ。
そうして俺は右手を上に向けた。
「む?貴様何しとるんじゃ」
「アビリティ発動ー【多重】雷砲」
「な、なにぃ【多重】だとぉ」
先生の氷獄は正直めちゃくちゃ硬い、雷砲一発くらいだったら傷なんてつかないだろう。
そう一発ならね。
俺はアビリティ雷砲を【多重】により拡張させ、本来なら1発までのところを対象物を破壊するまで止まないように設定した。
「さて何発で貫けるかな?」
それから約1分間止むことなく雷砲を氷獄の分厚い天井にぶつけ続けた。
「まったく、迅雷だけならまだしも【多重】まで使うとは……」
総弾数15発、これが氷獄と天井をぶち破るために使った弾の量である。
やっぱり先生は強いな、1発の威力が700以上ある雷砲をこれだけ防ぐ牢屋を一瞬で作るなんて。
まぁでもこれで準備ができたな。
「まさかこれほどまでのアビリティを使えるとは、師匠として素直に嬉しいが、それ故に悲しいぞオルクス!魔獣なんぞと手を組むとは」
「ごめん先生この魔獣達、実は俺が作ったんです……」
「なっ、何を言っておるんじゃ貴様!この期に及んで儂に嘘をつくとは!」
ま、まぁ普通に信じませんよねー。
でもこれは想定内。
さぁて先生に俺が作ったことを信じさせるとするかぁ。
「先生は人狼族を知っていますか?」
「あ、ああ知っている」
「人狼は平均レベル200以上ある辺境に住む特異種族です、そして先生が先程凍らせたあの男アロウもその一人です」
俺の言葉を聞き先生は倒れているアロウの方を見た。
しかしそこにアロウの姿はなかった。
「あ、ありえん人狼族は……15年前に途絶えている」
「ではあの姿はなんだと思いますか?」
「う、嘘だそんなはずは」
俺はそう言ってアロウの方を指刺した。
そしてそこにいたのは、先程までの青年ではなく長い白髪に加え獣の耳を持つ人狼だった。
魔獣ー人狼アロウ、通常時レベル320、人狼時レベル……450。
「よぉおっさん、さっきの続きはじめようぜ」
人狼化したアロウはそう言って先生の方を見て笑った。
先生は目に見えて動揺していた。
それもそうだ、今のアロウはさっきまでとは違いいくら先生でも相手にするのは厳しい。
それに絶滅した人狼族が目の前にいるんだ、誰だって驚く、それにこれをみれば先生も俺が魔獣を作ったと信じる筈だ。
「……アビリティ発動ー【最大解放】瞬間凝結」
「え?」
そうして一瞬でエイドリアンの屋敷全体は凍ってしまった。
「やはりオルクス、貴様は耐えたか」
「え、ええ」
ギフトスキルードレインタッチ、触れたものの力を吸収するスキル。
このスキルはアビリティにも有効であり、俺は咄嗟にこれを発動させ自分に迫った先生の術だけを吸収した。
故にアロウはもろに受けてしまった。
「あ、アロウ……」
「案ずるな、奴ならすぐにでも動き出すはずじゃ、それまでに貴様に話したい事がある」
先生はそう言って真剣な目で俺を見た。
なんだ話っても、もしかしてギルドクビとかだったりしないよな……。
「な、なんですか話って?」
「……オルクス貴様、七獄の魔人を知っておるか?」
七獄の魔人かぁ、えっと平均レベル500以上の魔人達で確か先代勇者を殺した奴らだったけか。
「ええまぁ、噂程度の事だけですけど」
「どうやら最近そいつらの一人が動き出したようでな、お前何か知らんか?」
……どうしようまたまた心当たりがあるな。
どう考えてもあいつだよな……。
「そうですね、さっき会いましたね、つかなんなら戦いましたね」
「ふっなるほどな、それなら話は早い手を貸せオルクス、奴らを迎撃つぞ」
え、迎撃つって先生、正直言ってあんな奴一人なら俺一人でも……。
「お前今七獄の魔人一人ならやれると思ったな、甘いなオルクス今回の相手はそれだけではない、それに加え隣国のエルナス王国軍5万もおるんじゃぞ」
そう言って先生はニヤリと笑った。
おいおい、最強の魔人に加えて他国の軍とか、正直言って俺があの木から力を得ていなかったらこの国滅んでない?
まぁでも今の俺にはそれらを止める力があるわけだし、それに相手は魔人。
ここは一つ本気で暴れてみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます