どん底から這い上がり

新太

第1話


「別れよう…」

その一言に、時が止まった。

結婚して3年

娘は一歳になったばかり

一番最初に頭をよぎったのは

娘と離れたくない…

毎日一緒にお風呂に入り

一緒の布団で2人で寝て

なのになんで娘と離れなくちゃいけないんだ。


「別れるのはいい。

だけど娘はどうなるんだ?」


俺の頭の中は娘のことでいっぱいだった…


「娘は私が引き取る2度と

あなたにも合わせたくない

父親がいたことも教えたくない。」


本当に頭が真っ白になった。

なんでこんなひどい事を言えるんだ…

俺の目からは涙がぽたぽたと

こぼれ落ちていった…


「あなたがお金をたくさん稼いだり

してくれるなら話は別だけど。

自分のこれからの

幸せのために別れたいんだよね。」


そうかそうだよね。

この人はこういう人だった…

自分の中で何かが

弾け飛んだ。




俺の名前は川田順、25歳

家を飛び出し

夜道を空を見ながら歩いてる。

これは現実なのか夢なのか

夢であって欲しい

頭の中がそんな思いで埋め尽くされる。


自分のこれからの幸せのために別れたい

この言葉に胸が締め付けられる

この言葉が

娘じゃなくて自分の幸せのために

なのが何より一番悲しかった。


自分自身が悔しくて悲しくて

これから娘から父親か母親を奪うこと

娘の人生が自分達のせいで変わっていくこと

涙が溢れて止まらない…


ごめんねごめんね。

こんな情けないパパでごめんね。

幸せな日常はこうも簡単に

崩れていくんだ。


次の日家には

離婚届が1枚置いてあり

娘と彼女の姿はなかった。






人生に絶望した。

「もう生きる意味がない」

自分の口からこんな言葉が出るなんて…

もう娘は帰ってこない。

仕事から帰ってきたら

抱っこ抱っことせがんできた

あの姿はもう一生見ることが

できないかもしれない。


これから生きる意味も見出せない







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