第50話 マルメット山脈
オレ達は、メグさんに連れられてギルマスの部屋に来た。
「はじめまして。オレは『ワールドピース』のレイです。こっちは、エリー、ミク、リリーです。」
「おう。この街のギルマスをやっているレオンだ。よろしくな。それで、S級パーティーの諸君が、こんな田舎町に何の用だ?」
「メグさんにも話したんですけど、オレ達、マルメット山脈の向こうに行きたいんですけど。」
「今まで、数多くの冒険者が、海からも山からも挑戦してきたが、誰一人帰ってきたやつはいねぇ。」
「じゃぁ、オレ達が最初になるってことですね。」
「挑戦者には、S級のやつもいたんだぞ。聞いているのか?命が大事なら、止めといたほうがいいぞ。」
「でも、何があるかレオンさんも気になるでしょ?」
「昔からの伝説があってな、あの山脈の向こうには海がある。さらにその向こうには、魔族の住む西大陸がある。あの山脈は、西大陸に現れるとされている大魔王から、この大陸を守るために、古代竜とその配下の四天竜が住んでいるという。そして、その山の向こうに大平原が広がり、竜の子孫達、つまり竜人族がいるらしい。四天竜はおろか、竜人ですらS級冒険者が束になってもかなわないらしいぞ。そんな場所に本当に行くのか?」
「その話が本当ら、なおさら古代竜や竜人族に会う必要があります。西大陸には、大魔王を名乗る者が現れました。その者に、このリリーの祖国も滅ぼされました。だから、オレ達は、何があっても行きます。」
「これ以上は何も言わんよ。ただ、ワイバーンがいるってことは、伝説は本当かもな。」
オレ達4人は、ギルドを後にして、昼食を食べた後、市場で大量の食料を買い込んだ。その後、異空間の家でのんびりしながら、会話した。
「古代竜に会ったらどうするの?レイ君。」
世界の現状をどこまで知っているのか、聞いてみるよ。」
「レイは、いつか西大陸に行って、リリーのお父さんの国を復興するつもりかにゃ。」
「そのつもりだよ。」
「だったら、竜人族には味方になって欲しいにゃ。」
「大魔王は強い。味方必要。」
「そうだね。相手は魔族だもんね。リリーを見れば、魔族の強さがわかるよ。」
「私、強い。」
細い腕で力こぶを作って見せるリリー。
「胸より大きいにゃ。」
「ミク!ひど~い!」
「どんなリリーも大好きだよ。」
オレがリリーを抱きしめて頭をなでる。
「ずる~い。」
すると、エリーが頬を膨らませていた。
その後、4人は仲良く一緒に、夜のお仕事をしてぐっすり寝た。翌朝、4人は、空を飛んで、マルメット山脈を越えようとしていた。街を出て、山脈の中腹あたりに来た時、ミクが何かを見つけたようだ。
「あれイエティ-じゃない?なんか、グレーオオカミの群れに追われているよ。」
「本当だ。子ども連れの番じゃないかな?」
「助ける。」
オレが、助けようかどうしようか悩んでいると、リリーがイエティ-の近くに降りた。
「ウホォ、ウホォ」
イエティ-驚いた様子だった。
リリーが『サンダーアロー』でグレーオオカミを攻撃しようとしたので、オレが止めた。リリーは不思議そうにオレに聞いてきた。
「レイ君。どうして止めるの?」
「グレーオオカミは、魔物じゃないよ。だから、むやみに、他の生き物を襲うことはないんだ。今回は助けるけどね。」
オレは、『アイスウォール』を発動させ、グレーオオカミの前に氷の壁を作った。グレーオオカミたちは、突然、巨大な氷の壁ができたことに危険を感じたのか、逃げて行った。イエティ-の親子も驚いていたが、グレーオオカミがいなくなったことに安心したのか、座り込んでしまっていた。
「えっ、でもイエティ-の親子が殺されそうだった。」
「リリーは、昨日ワイバーンのお肉食べたでしょ?」
「うん。」
「同じだよ。グレーオオカミも生きるためにイエティ-を襲ったんだと思うよ。」
「そうか。オオカミさん達も食べないと死んじゃうもんね。」
「魔物は、生きるためじゃなくて、本能で他の生き物を殺すんだよ。それに、魔物は、魔素だまりが原因でどんどん生まれるからね。だから、退治しているんだよ。」
「でも、イエティ-も魔物だよね?」
「イエティ-は雪の妖精の一種だよ。」
「そうなんだ。」
リリーとオレがそんな話をしていると、ミクがイエティ-に話しかけている。話が通じるのかな、と不思議に思っていると。
「イエティ-の夫婦がありがとう。」って言っているよ、とミクが教えてくれた。
「ミクはイエティ-の言葉がわかるのか?」
「獣人族は、元々妖精族だから分かるにゃ。」
「じゃぁさ。古代竜がどこにいるのか聞いてみてくれる。」
ミクが、イエティ-の夫婦に古代竜のことを聞いている間、エリーとリリーは「可愛い!」といって、イエティ-の子どもと遊んでいた。
「レイ。わかったにゃ。あそこに見える一番高い山の洞窟にいるらしいにゃ。」
「じゃぁ、気を引き締めていこうか。」
オレ達はイエティ-の親子に食料を渡し、再び飛翔して高い山の頂を目指した。
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