第5話 育児のいろは
扉からノックが聞こえエルが出ると、向こう側には綺麗な人が立っていた。
『神様、お邪魔致します。先程頼まれていた食料をお持ちしました』
「ありがとう、えっと、モドゥだったか」
『はい。小さき人間もこんにちは』
綺麗な人は私に話しかけてきたので慌てて頭を下げた。
まだ咄嗟には声が出てこない。
「モドゥ入りなさい、大したものはないが」
『お邪魔致します』
「えっと、おねぇちゃん、いらっしゃい、ませ」
私がお姉ちゃんというと綺麗な人は顔を抑え突然私に背を向けたと思うと叫び始めた。
『なななんあっ、神様!! この小さき人間は何なのですか!?』
「へ......? 何って何......?」
私は何か綺麗なお姉さんにとっていけない存在なのかと思い悲しくなる。
『何なのですか!! この可愛らしい生物はーー!!』
「「はい?」」
『はああああ、ちいさい、可愛い、ちいさいでも人間、でも、でも、可愛いっ!!』
綺麗なお姉さんは私を抱っこすると突然ぐりんぐりんと頭を撫でたりその場で回ったり。
そのお陰で私は目が回りぐったりしてしまった。
「モドゥ、落ち着いて、ストッーープ」
『あ......ごめんなさい、小さき人間。人間は脆いものだと忘れておりましたわ』
「ら、らいじょ、ぶぅ......」
ちかちかと星が見えた。
『それにしても、小さき人間は魂と器があっていないようですね』
「ああ、器の状態が良くなくてね」
ぐぅうううっと元気よく私のお腹が返事をしてしまった。
起きてから何も食べていないし、食べたのもあのスープ一回だけだ。
「まずは、モドゥから頂いた食料でご飯にしましょうか」
『小さき人間あと少し我慢できますか?』
「あのね、私チハルだよ。お姉さんの名前教えて?」
『ふむ、チハルですね。私は森の管理者ドライアドであり名をモドゥといいます』
「もどぅ......うー姉って、よんでいい?」
私が首を傾げると、綺麗な人は凄い勢いで首を縦に振ってくれた。
神様が食事を用意してくれている間にうー姉にお話する。
「あのね、うー姉みけ猫のみけ太を知ってる?」
『みけ猫のみけ太?なんですそれは』
「獣人ってのになってるってエルが言ってたよ?」
『獣人のみけ太......ごめんなさいね、私には分からないわ』
「そっか......ありがとう」
私があまりにもしょんぼりとしてしまったようでモドゥは頭を撫でてくれた。
「モドゥにも分かりませんか」
『神様はそこまで分かっているのに居場所をご存じないのですか?』
「はは、私は創造主であり全知全能の神ではありませんから」
『ふむ......では、ここから1里離れた所に獣人の村があります、そこで聞いてみるのがいかも知れません』
「成程、それはいい考えですね」
テーブルに並ぶのはかくかくと切られた果物。
何の果物か想像がつかないが、多分、リンゴだと思う。
モドゥさんは絶句した様子でテーブルに出された果物を見ていた。
『か、神様差し出がましいようですが、少しお台所を借りますね』
「ええ、構わないが......」
そういうと、台所にある物をつかって、リンゴをすり卸し蜂蜜を垂らし私の前においてくれた。
『チハルは体力がない上に食べる力が極端に弱っているのでこのような液状に近いお食事がよいかと』
「やっぱりそうか、最初スープだけは出したのだが何を与えればいいか分からなくてな」
『そうでしたか(これは、チハルの生命にかかわるかもしれないわ!)』
大人の会話を聞き流しながら、私は、うー姉がつくてくれたすりおろしのリンゴを食べながら幸せに浸っていた。
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