第4話 決闘
「うまい……」
今は俺とルチア、ルージュの3人で食堂でディナーを食べている。魔族の料理はどんなものかと思ったがほぼ人間食と同じだ。というか普通においしいだけのカレーだ。具材は少し違う気がするけど。
「口にあったようで何よりだよ。妖魔族はそのルーツは人間族とほぼ変わらないからね。自然と味覚も似たようなものになるさ。」
「今度……私が手料理作ったら……召し上がっていただけますか……?」
「もちろんだよ、ありがとう。」
ルージュの趣味は料理なのだろうか族長の妹にしては珍しいな。普通高い身分は料理なんてできないものと思っていたが。ルチアがニヤニヤしている。
「ふーん、そうなんだー、なるほどねー」
「ちょっとお姉ちゃんやめてよ!!」
二人で何やら言い争っている。ほほえましいな。
「ところで具体的には俺はなにをやるんですか?」
「内戦がおこったときに加勢をしてくれるのが一番重要なことなんだけど……」
ルチアがルージュをちらっと見てから続ける。
「それまではルージュと一緒に魔族学校に通ってくれないか?引っ込み思案な子だから心配でね……」
魔族学校。魔族にもきちんとした教育制度が整っているのか。たしかに異種族連合である魔族に統一された教育をするというのは理にかなっている。
「わかりました。そうします。これからよろしく、ルージュ。」
ルージュは顔を真っ赤にして下を向く。よほど人見知りをこじらせているんだろうな。これは姉が心配するのも納得がいく。
「私は納得していませんな。」
パトリックが食堂に入ってくる。
「そもそもルージュお嬢様の護衛は許嫁であるジュドー様が行われるはず。それを素性の分からない人間にだなんて……先代様はお許しになるはずがありません。」
「だが今の族長は私だ。私の決定に従ってもらう。」
険悪な雰囲気が漂う。よく考えたら人間と戦争をしている魔族が人間の俺と手を組むというのもおかしな話だ。人間バレしたらどうなるんだろう?
「僕も納得できません。」
ルージュより少し年上だろうか、12,3歳くらいに見える少年だ。
「おい……パトリック……まさかアランが人間であることを広めたりはしていないだろうな。」
一瞬で空気が凍る。これが族長の実力から出る圧力か。
「さすがにそんなことは広めてはおりません。ただジュドー様は当事者ですし何より 次の妖魔族を担っていく存在です。伝えないわけにはいきませんな。」
こちらもすごい圧だ。全くひるんでいない。ただルージュは今にも泣きだしそうだ。
「僕と決闘しろ!僕がこの人間より弱かったらそれでルージュのことは身を引きます。ただ僕が勝ったらそのままこいつは殺します。」
無限に物騒なことを言っているな。若いっていうのは恐ろしいものだ。
「いいだろう。そのルールで決闘を行おう。男に二言はないな。」
「もちろんです。ルージュの盾となるため研鑽を積んできた僕が人間ごときに負けるはずありません。」
俺抜きで話が勝手に進んでいく。いあ、これも将来の平穏な毎日のためだ、、仕方ない、のか?
ディナーもそこそこに庭に連れ出される。もうすっかり夜になっている。
「木剣寸止め一本勝負。ルールはそれでいいな。」
「真剣を使わせてください!敵をわざわざ生かしておく必要がないじゃないですか」
「それならジュドーはそれでいい。ただアランは寸止めをしてくれ。」
「……こう、軽く実力差をみせてやってくれ。」
木剣を渡されるときにルチアから言われる。
「あの……彼はどのくらい強いんですか?」
真剣と木剣ではさすがに無理があるのではないか?目の端に素振りをしているジュドーの姿が映る。剣を振る姿はさまになっている。
「ジュドーは妖魔族のなかでは私についで強いな。私の次の族長は間違いなくこいつだろうな。」
初耳すぎる……そんな相手木剣で挑むのか……
「ただ妖魔族のなかの世界しかまだ知らない。だから自分が一番強いと思っている。ジュドーと同じ歳の私だったら100回戦っても触れることすらできないだろう。周りもあいつのことを『神童』といってほめたたえる。」
ルチアはため息をこぼす。
「だからこそそろそろ挫折経験が必要な頃なんだろうな。自分よりも強い奴がいることを知っておかないといけない。だから……頼んだぞ。」
「早く始めましょう。もう準備はとっくにできています。」
ジュドーが急かしてくる。
「わかった。じゃあ始めるぞ。両者離れて、剣を構えろ。」
やめましょう、などと提案するような雰囲気ではなくなっている。魔族に、それも妖魔族の中でトップクラスに強い相手にハンデを背負って勝てるのか?
「あの……アラン様……頑張って……ください……」
ルージュからか細い声援が送られてくる。
「いいから早く剣を構えろ!お前は許さねえ!」
ジュドーが激昂する。
成り行きに身を任せるしかないか。そう思いながら木剣を構える。比べてみて相手の構えている真剣が強そうに見える。俺もつかいたい。
「試合開始!」
ルチアの掛け声が響く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます