第835.5話 お子様モードの次代様達
*ラフィエルテとオフィアと……
「素晴らしいわ……なんと整然として、美しいこと……!」
「ええ、リンディエンの書架など、まだまだだわ。この数字ね、分類というのは」
「そうですわ。これの一覧表、今度皆様にお渡しして蔵書の管理にお役立ていただこうと思っております」
「それは嬉しいわ! ありがとうラフィ……」
「わたくし『エルティ』ですわ、フィーア様」
「そうだったわ。ふふふふっ、本当に子供の頃のようだわ」
「おねーちゃんたちの、きしょう、きれいだね」
「え?」「徽章?」
「うんっ! あたらしいの?」
「えーと、これは……いただきものなのよ」
「い、いた……? ほんのごほうびじゃないの?」
「本を読むとご褒美がもらえるのかしら?」
「うんっ! ほらっ、さわらーーっ! かっこいいでしょっ!」
「そうね、凄く素敵だわ」
「タクトさんが言ってらした『感想文』ね。こんな小さい子まで……ふふふっ、可愛らしいこと」
「本当、素敵だわ、この徽章……どこかに見本があるのかしら?」
「あっちにあるよっ! こんど、しいたけもらうのっ!」
「……面白いものを徽章にしていらっしゃるのねぇ……」
「その感覚はやっぱり謎だわ」
((だけど……ちょっと、買いたくなってしまうわねぇ……))
*ヴォルフレートとオーリエンスとリザリエと……
「あら、小さい子達に本を読んであげている神務士がいるわ」
「そういえば『
「ふむ……よい声だな。非常に落ち着く。神職というのは、人々に安心感を抱かせねばならぬからあの声は貴重だな。よい技能を持っているのやもしれん」
「そうね、こうやって神話を読んであげるのも、大変素晴らしいわ。ウチの教会にも、涵養士を入れてみるのもいいわね」
「男性教会でも司書室でなら、このように対応できるだろうか……?」
「子供達用の部屋があれば、いいかもしれませんよ。ほら、ここの窪みになっているところのように、少し玩具なども置けば本に飽きても気分転換もできますし」
「……?」
「どうしたんだ……うわ、子供……いつのまに」
「あ、あの、あのね、よめないとこがあるの」
「おや、どこだい?」
「ここ」
「まぁ……これってあなたよりもう少し大きい子向けの本よ? 偉いわねぇ、お勉強しているのね」
「これって、皇家の……うわぁ、いいなぁ、こんな本が全部読めるのか!」
「やっぱり作りたいな、子供達と一緒に本が読める部屋」
「だけど珍しいわよ。こんなに本があるのに、子供が走り回れる場所なんて……管理方法、賢魔器具統括管理省院で解るかしら?」
*テオファルトとヴァイダムとシュツルスと……
「ふぉっ! これはリエッツァ! なんと……こんなところにも自動販売機が……!」
「うわー、子供達用ってことか……あ、ちょっと小さいものも置いてる」
「食べきれる分ってことなんだろうなぁ。あーーっ、揚げ芋だぁ……美味しそう……」
「金は?」
「さっき市場で使ってしまったから……余分には持ってきてない……」
「俺も……ティム、貸してくれないかなぁ」
「食べたいのか?」
「「「……!」」」
「いいよ、揚げ芋くらいなら買ってやるよ。今日、給料日だったんだ」
「……適性年齢前なのに、働いているのか?」
「ああ、欲しい技能や魔法を伸ばしたいなら、やりたいことを見つけていろいろ試すのがいいって教わってさ」
「それって……タクトさん?」
「おっ、アニキのこと知ってるのか。じゃあ、俺の弟分ってことで。ほら、受け取って」
「あ、ありがとう」
「いいって、いいって。昔は俺も、食べさせてもらっていたからさ。おまえ達が稼ぐようになったら、別の子に食べさせてやってな」
「なんと……」
「泣いてるのか、シュツルス」
「テオだって鼻水をすすっとるではないか。こんな風に、当たり前のように……感動的だ」
「見てよ。他の子達もさ、小さい子達を助けたりしながら……参ったなぁ、子供に教えられることって本当に多いよ……」
*フィオレナとエッティーナとノルティシュと……
「……でな、この画家はカタエレリエラのケルレーリアから、ルシェルス方面を旅しながら絵を描き続けていたらしいぞ」
「すごーーい!」
「そうだな、凄い」
「レトーにーちゃん、これって、うしー?」
「うむ、水牛だな! タクトさんの食堂で、この水牛製の生絡が食べられるのだぞ!」
「知ってる! モツァレーラ! この間、食べたのっ!」
「あの神務士、よく知っていたわね、あの画家のこと」
「本当だよ。確か作品数はとても多いが、画集などは皇宮史書にしかない物が多かったはずだ」
「あっ、見てっ! これ……この『絵画装丁』の本って……」
「そうか! 皇家からの寄贈書か!」
「なんて羨ましいの、シュリィイーレ!」
「それにしても、あの神務士はよく勉強しているね。流石は、シュリィイーレの神職だ」
*ティナレイアとアルリオラとガシェイスとラシードと……
「ちょっと、ちょっとあなた!」
「おや、見かけない子だね……えっと、僕に何か?」
「あなたが今、あの子達と解いていた算術……見たことのない文字が使われていたのだけどっ?」
「ああー、そうかそうか。うむ、あれはだね、この遊文館で書き方を教えてくださっている方が考案なさった『算術のための記号』なのだよ。これをあげるよ。大変便利で式が簡素化できるから、是非覚えてくれ給えよ!」
「あ、一覧表……ありがとう……」
「算術は非常に素晴らしい学問だと思うが、取っつきにくくてとても地道だ。是非とも工夫して続けて欲しいのだよ。そのために手助けができるのであれば、僕はいつでも協力するからね!」
「素晴らしいわ……神職って、算術は専門外とばかりに軽んじる方々が多いというのに……!」
「まったくだよ。数字というのは神々にも繋がるのだから、算術こそが最優先で学ぶべき学問だ」
「ううむ、シュリィイーレの神務士は優秀だな。新たに職位を作ってまで留めおきたいと思われるのも当然であるなっ!」
「書き方を教えていたというのは、タクトさんよね?」
「当然、そうだろうねぇ。まさかこんな『算術のための独自文字』まで……これも故国のものなのだろうか?」
「やっぱり、とんでもない国だったのだわ。大陸史に何か書かれていないか、もう一度調べなくっちゃ」
「歴史書か……タクト殿の文字くらい読みやすければ、もっと進むのだろうがなぁ……」
*バトラムとラウレイエスと……
「……何をしているんだ、ラウレイエス」
「しっ! 名前を呼ばないでくれよ!」
「ああ、すまん……が、どうしてそんなところに?」
「あそこだよ」
「……あ、ああー、ライリクスか!」
「名前は言うなとっ!」
「ほほぅ、あの抱いているのは娘だな。可愛らしいではないか!」
「うん。とても、可愛いと思う。僕の娘達と、ちょっと似ている気もするよ」
「前々から思っていたが、おまえの家門で女の子ばかりというのは珍しいな」
「偶にそういう代もあるんだよ。あの子を近くで見たいけど……あいつの魔眼だと、流石に違和感を感じられてしまうだろうから近寄れない」
「あんな幼子まで連れて来られるというのは、素晴らしい施設だな」
「親達と一緒に来ている幼子は多いみたいだね。歩けない子まで連れて来ても大丈夫な場所など、僕は女性教会くらいしか知らなかったよ」
「うむ、まったくだ。このような場所は、なるべく多く作りたいものだな」
「人材の確保が難しいよ……全ての町でというのは」
「そうだな、シュリィイーレだから、可能なのかもしれんな……その辺りのことは、領地に戻ってからだな」
*全員のキモチ
(まだ帰りたくないーーーー!)
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