第48話 水源を探しに
翌日、俺は朝からある調査に出かけた。
この町の水源を探すのだ。
水なら絶対に、全ての人が口にする。
この水そのものに、毒素や吸い込んだ粉塵を身体から取り除く効果を与えられないかと考えたのだ。
他にもいい手があるのかもしれないけど、俺にはこれが一番いい気がしたのだ。
町中に川はない。
ローマ水道のように石造りの水道で、水を町まで運んでいる。
水源から町まで水を引いている、一番最初の場所に魔法を付与するのが一番効果的だ。
この町は町の中央から放射状に、メインストリートが八本ある。
水道は道の真ん中に埋められていて、そこから各家の井戸へと水路で水が巡っている。だから水源から、まず町の中心まで水を運んでいるはず。
「でも水源近くだけじゃなく、メインストリートの起点近くにもつけておきたいな」
一カ所だけで浄化してると、そこに何かあった時に対応できないと困るし。
二段、三段構えくらいにしておいていいと思うんだ。
うーん、心配性だな、俺。
町の中心には教会・各役所・色々な組合などの公共の建物がある。
この地下に水がどこから運ばれているのか、表からは見えない。
水源を護ることは、町としても国としても重要だ。
絶対に争いが起こらないとは言い切れないので、どの領地だって隠しておくものだ。
そして、魔獣などに荒らされないように護っているはず。
先ずは水源の場所確認だ。
「一番の高台、北の錆山は……あそこは水が出ても飲用には向かないだろうし、北東側か?」
北東側にも錆山よりは低いけどいくつかの山がある。
断層もありそうだし、あの辺りかも。
そういえば、東の山は素材採取に行く人がいない。
「入山を制限……いや、禁止しているのか?」
東門の近くへ行ってみると、門から先の道が山側でなく、南側へ延びている。
東の山は大きな崖が見えているので、おそらくあっちが水源。
水源に近寄らせないように、道ができているのだろう。
一番近いのは北東門だが、門は施錠されており誰も行き来はできない。
見張りもいるから、北東門から外に出るのは無理だ。
北東門から東門辺りは南側より壁は低いが、土地の高さそのものが南側より高い。
隣町に一番近い門もここなので、衛兵隊が護っている。
魔獣の恐れは少ないけど、人の流れが多いのだろう。
多くの人と、馬車が行き交っている。
「タクト……? どうした、こんな所で」
衛兵隊副長官のビィクティアムさんだ。
ここら辺にいつもいるのか。
「こんにちは。こっちに来た事がなかったので見てみたくて……でも外には出ない方が良いのかなぁ?」
「そうだな……ひとりなのか? 近くくらいなら、俺が付き添ってやるぞ?」
「いいんですか?」
「今は休み時間だし、少しだけなら構わん」
最高の護衛だ。
ラッキー!
でも流石に水源まで案内してとは、言えないよなぁ。
この近辺の様子見だけにしとこう。
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