第15話 出来ることと出来ないことを確認していこう

 お夕食も美味しくいただきました。

 ミアレッラさんに、お店の手伝いをしたいと言ったんだけど断られてしまった……

 夜に、子供を働かせちゃダメなんだって。

 子供って……

 うううっ、本当に、誤読ショック甚だしい!

 練習するぞ、練習!



「どうせ書くなら、検証しながら書こう」


 試してみたいのは、紙以外のモノに書くこと、だ。

【付与魔法】は金属製のものや、木工製品に使われるのが当たり前だ。

 むしろ、紙に書くなんて、全くないと言っていい。


「だとすると万年筆じゃ書けないから……油性マーカーで試すか」

 金属板とベニヤ板を出して、それに書いていく。


 銅、アルミ、鉄、ベニヤ……書くことはできる。

 でも油で落ちてしまえば、すぐに使えなくなる。

 他のペンだって、掠れたり文字が傷ついて欠けてしまうと効果がなくなった。


「……字を彫らないとダメなのかな?」

 工房で見た何人かの付与魔法師は、文字を彫っていた。

 ベニヤ板で試したが、全く発動しなかった。

「書く」ということでないと、俺の魔法は使えないということか。


 文字の保護のための魔法を別に付与する……なんてやり方では、文字数が多過ぎだ。

 そもそも、そんなに書ける面積のあるものばかりじゃないし……

 うー……ちょっと、詰まった感。



 悩んでいた時にうっかりマーカーのキャップを閉め忘れて、思いっきり手に書いてしまった。

「やべっ! でも洗浄浄化……あれ? 消えない……?」

 俺は慌てて、お守りの中を確認した。


「……文字が薄くはなっていないし……あ!」

 取り出した途端に、手に付いていたインクがなくなった。

 なんでだ?

 しまっていたって、翻訳なんかはちゃんとできてるのに。

 何が違うんだ?


「……! そうか、身体洗浄浄化は……紙が大きかったから、折って入れたんだ!」

 その他のは付箋くらいのサイズに書いていたから、紙を折っていない。

 でも、浄化の方はハガキ大だ。


 中に文字が隠れるように、折って小さくして入れていた。

 開いた途端に、効果が発揮されたんだ。


「紙を折らなければ……袋やポケットに入れてても効果がある。それじゃあ!」

 鞄に紙を入れ、コレクションの中にしまう。

 手にマーカーで書いて……消えない。


 うー、コレクションの中だとダメなのか?

 いや、鞄の中だからか?

 しかし、既に何か書いた紙は、コレクションの中に戻せなかったし……


「……書いた紙が、五枚以上有ったら……?」

 今持っている状態変化・維持系のものはみっつだ。

『自動翻訳』『鑑定偽装』『身体洗浄浄化』

 あと、ふたつ……

 何を書いていいか解らなかったので、普段から思っていることを書いた。


『視力回復』

 視力は、眼鏡が必要なほど悪い訳ではない。

 多分、0.7くらいだ。

 さほど良くもないから、1.2くらい見えたらすっきり見えるだろうと思っていた。


『体力増強』

 体力は本当に自信がない……あ、でも、これすぐには解らないな。

 まぁ、いいか。


 五枚の紙を持って、コレクション画面に近づける。


 しゅっ


 やった!

 入ったぞ!

 うん、効果も持続している!

 これで持ち歩いてても、落とす心配はなくなったぞ!


 でも、どこに入ったんだろう……?

 ……コレクションの総ページが増えてる!

 分母が『20』から『21』になってる!


 一番最後に増えていたページは【文字魔法】……

 文字……魔法?

【付与魔法】じゃなくね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る