第13話 組合に行って登録しよう

 もらった身分証には、表に名前だけ表記されている。

 裏には、この身分証を発行した町の名前が記載されているのみだ。


「ほら、タクト、身分証はこれで、首から提げておけ」

 ガイハックさんがくれたのは、身分証を入れることのできるケースで首から提げる鎖も付いている。

 スライドさせて入れるらしい……ますます、ドッグタグになってしまった。


 でも、なんかカッコイイ。

 え、こーゆーの好きだよね?

 男は!

 好きなんですよ、こういうの!


「ありがとうございます……これなら、なくさないですね」

「他の町に行ったりすると、門の所で必ず見せるように言われるからよ」

「そうなんですか。でも、暫くここにいますし」

「巡回の衛兵からも言われたりすっから。すぐに取り出せるようにはしておけ」

 ……職務質問とかされないように、言動には注意しよう。


 その後、ガイハックさんが連れて行ってくれたのは魔法師組合だった。

 ここで魔法師として登録しておけば、仕事が受けられるらしい。

 そうか、そのためにも身分証が必要だったんだな。

 ガイハックさんが行き届きすぎてて、俺はどれだけ恩を返せばいいか解らないぞ。


「……珍しいな、ガンゼールがここにいるなんて」

「ああ……依頼を出しに来たんだよ」

 そうか、依頼したい時も仕事を探す時もここに来るのか。

 ……ハロワかな?

 異世界版の。


「おや、ガイハック。珍しいことだな」

「久しぶりだな、ラドーレク。組合長が受付にいるなんて方が珍しいぜ」

「ははは、今はコーゼスくんが休憩中でね……ん? その子は?」

 また子供扱いだよ。

 くっそー、童顔が憎い。


「俺んちに住まわせてる子だ。魔法師だから、登録しておこうと思ってよ」

「いらっしゃい、登録は初めてかい?」

「はい」

「じゃあ、身分証を出してくれ」

 さっきのドッグタグを取り出す。


「この上に置いて」

 また石板だ。

 この世界では、石板が媒介でいろいろ鑑定できるのか?

 それとも、鑑定魔法が付与されている石板なのか?


「ふむ……タクト……二十三歳か。ほぅ! 大した魔力だね」

 うううっ、本当は二十八歳なのにーっ!

 また、誤読ショックが甦ってきた……


「おまえー、やっぱりまだ子供じゃねーか」

「そ、そんな事ないですよ!」

 ガイハックさんがどう思おうと、成人してるんだから……


「本人がなんて言っても、二十五歳で成人するまでは、子供なんだよ。こ・ど・もっ!」

 ……成人、二十五なの?

 だとしても、本当はオトナなんですよーーっ!


「そうだねー。じゃあ、保護後見人はガイハックでいいんだね?」

「ああ、勿論だ」

「じゃあ、おまえの身分証も置いてくれ」

 ……まだ、保護者が必要な年齢だったとは……


「よし、登録できたよ。はい、身分証を返すね」

 身分証の裏には【魔法師組合】【後見ガイハック】が追加されていた。

 ……絶対に、ガイハックさんに迷惑は掛けられない。

 マジで、ちゃんと生きねば。


 そして、表の名前の下に【魔法師 三等位】と書かれている。

 なんの魔法が使えるかは、明記されていない。

 つまり、おおっぴらに公開するものじゃないって事か。


「名前の下の、これってなんですか?」

 字は読めないことになってるからね。

「ああ、“魔法師 三等位”のことかい?」


「三等位?」

「登録したてはそこからなんだよ。仕事をして、技術と魔法が認められていけば、上の階級になるから」

 一番下っ端が、三等位ってことなんだな。


「まぁ、未成年だし、暫くは上がらないと思うけど頑張ってね」

 未成年って言葉キツイーーー!

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