第6話 更にいろいろ調べてみよう
名前を書くと、それが実際に現れる……なんて、魔法みたいだ。
「……魔法なのかもな、本当に」
よく解らないが、そういうことにしとこう。
異世界だし。
勿論、食べ物以外も出すことができた。
だけど、知らないモノは出なかった。
正確な商品名が書ければ、知らなくても出るには出る。
だが、形は正しくても凄く小さいとか、固くて食べられないものだったりした。
「俺自身が、一度も触れた事のないものや、食べた事のないものはダメなのか」
コレクションの中にあった食品図鑑や、通販の商品カタログで試した結果だ。
形だけでなく大きさや手触り、味とかが解っていないとダメという事らしい。
生き物は……出るのか?
変なモノは出せないな……
この世界にいないものだったら、生態系がおかしくなってしまうかもしれない。
川で泳いでいる姿を想像しながら『鮎』と書いた。
……出なかった。
いや、正確には、“生きたまま”は出なかった。
「そういえば、魚屋とかでしか見た事無かった……」
でも、ほ乳類は試すには危険すぎるし、虫も……まずいな。
生物はやめておこう。
取りあえず、鮎は焼いて食おう。
もったいない。
この、文字が現実になるというのは物品だけか?
現象や状態の変化もできるのか?
試しに『火』と書く。
ぼっ
小さい、字の大きさほどの火が出て、消えた。
文字が燃えて、なくなったからだろう。
油性ペンで『水』と書く。
水に濡れても、字が消えないので水も消えない。
その水に、『消えろ』と書いた紙を浮かべる。
……消えない。
消えたのは紙だ。
文章にしてみる。
『この紙に触れた水は消えろ』
その紙を入れると、水が消えた。
消えた水がどこに行ったのかは解らない。
「ゴミを消せればと思ったけど、別の場所に移動するだけかもしれない」
だとしたら、ポイ捨てと変わらない。
「無害なものに分解して消す……ってのはできるのかな?」
ポテチの空き袋に“生物に無害なものに分解してから消えろ”と書いてみた。
さっきと消え方が違う。
水は文字を書いた紙に触れた途端に、さっと全てなくなった。
このゴミは霧のように分解されて……消えた。
これなら他の場所に行っただけとしても、無害だから……許してもらえるかな。
「でも、これ……使い方を間違えると、とんでもないことになるな」
文字を書けば、それがなんでも現実になる。
俺の持っている色々な種類の筆記具を使えば、大抵のものに書ける。
「もしかして……生きているものに『死』って書いて殺したりも、できちゃうのか?」
生きているものの状態を変えられるかどうかは解らない。
試すことも……あ、いや、試せるんじゃないのか?
壊したり、消したり、殺したりしなくても……“治す”事ができるのでは?
俺は擦り傷に『この紙に触れた傷は治れ』と書いて傷口に触れてみる。
そっと紙を離すと……擦り傷は完全に治っていた。
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