コンテンツ4ーメカニックの工房

 数日後の事……。

 ルイスは1人でビブレスにやって来た。


 またメカニックさんの工房へフローターを飛ばしたのだった。


 今回駐機したのは、近くの駐機場。勝手に敷地内にフローターを着陸させても不躾ぶしつけだと思ったのだろう。


 フローターを降りたルイスは歩いて工房に向かった。


 建物に着くと、ドアモニターをタッチするルイス。

 「どちら様でしょうか?」


 前回と同じ対応。


 「先日伺ったルイス=タイラーです。お話だけでも出来ませんか?」


 「連絡の無い方の応答はし兼ねます。お引き取りください。」


 「失礼ですが、あなたはこの工房の方?」


 「私はドアモニターの対応を命ぜられたAnnです。……連絡の無い方の応答はし兼ねます。お引き取りください。」


 ルイスは無言でその場を移動した。

 「チッ。Annに任せて当の本人は顔を出したくないんだわ。話もしたくないのかしら。」

 ブツブツと独り言を言いながら、裏手のドックに歩いて行く。


 周囲を見回したが、フローターか宇宙船ふねの出入り口以外にドアすら見当たらない。


 一回りして建物の裏手まで来た。短い煙突らしきが付いている。

 こっち寄りのスペースが工房なのかも知れない。同じ様に煙突も有る。


 内部に誰か居るのかすら様子が掴めず、諦めて引き返すルイス。


 表通りに出て駐機場に歩くルイス。

 向かい側から、Annを連れて歩いて来る男性。黙ってすれ違う。


 考え事をしながら歩いて行くルイス。

(今の人の様に、私もしばらくAnnを連れて歩かなきゃ。先ずはエンジャーの自宅周辺の街。それからガルシアの所。……ミクラットとフローターで少しずつ操縦を覚えてもらう。)


 色々考えながら駐機場のフローターに乗り込んだ。


 「ガルシアのドックまで行って。」言うとシートにもたれかかった。ルイスには珍しくオートで帰路に立つ。

 「フローターのオート機能はダウンロード出来るのかしら?ミクラットの操縦系も……。」


 オフェイル邸、建物の奥。

ドックの脇のフローター用駐機場に着陸するルイスの乗ったフローター。出てきたルイスはドック入口エレベーターを上がる。

 ドックは建物の3階なので、エレベーターでドックまで行ける。もちろん中からも階段も有る。ルイスはいつもこのパターン。


 「こんにちはガルシア。……ガルシア?……図書室かしら。」

 

 いつも腰掛けるシートを持って来ると、メインルームの天井を見上げて、また考え事の様子。

 

 (裏手に有るドックの入口は何処に有るのかしら?宇宙船ふねの出入り口以外に無さそうだった……。ドックのドアも無しでドアモニターの有る壁の反対側にもドアは無い。そんなに外と関わりたくない訳?……うーむ、これは相当変わり者なのかも知れない。)


 そこへガルシアが入ってきた。

「メインルームだけ照明ON……。あら!ルイス。来てたの⁉︎」


 「こんにちは、ガルシア。ビブレスの例のメカニックさんの工房に行ってきたわ。でもまたAnnがドアモニターに出て、結局会えずじまいよ。」

 

 「私もあれから何人も知り合いに連絡したけど、グロビアって人はビブレスじゃ知らない人は居ないくらい変わり者で有名なんだって。気に入った相手の仕事しかやらず、設計から全て自分でやるそうよ。」


 「確かに変わってる。今日行って気付いたんだけど、建物1周してみても、入口があのドア1つみたいなの。他にはドックの宇宙船ふねの出入り口位よ。どうやって入るのかしら。」


 「勝手に入って建物一回りしちゃったわけ?カメラやセンサーが有ったらどうするのよ。」


 「今度行ったらドックの出入り口を叩いて出て来てもらおうかしらっ。」少々気にさわっている様子のルイスだった。


 「まぁまぁ落ち着いてルイス。あなたは気が短すぎ!私達のAnnのカスタマイズは後回しにしても良いんじゃないかって思うの。知り合いの話だと、あるじの決まったAnnには対応相手のフィルターが厳しいらしいの。初期設定から主以外の指示は受け付けない……。だからカスタマイズは主の設定も初期状態の方が良いらしいわ。でも、メンテナンスもカスタマイズも、主が指示して、メカニックに対してフィルターを緩めれば済む事だからって話してくれたわ。」 


 「宇宙船ふねの依頼もしたいから、しばらく足運んでみるわ。どんな変人だろうと堅物だろうと頑固者だろうと会って話したい。だから私のAnnはしばらくここに置かせてねガルシア。」


 「そう言ってるルイスもかなりの頑固者。仕方ないわね。……あ、そうそう。今晩は両親出掛けてるから、一緒に晩ご飯でもどお?それとも買い物に行ってバーベキューってのも有りよ。」


 「ありがとうガルシア。遠慮無く晩ご飯頂くわ。」

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