第14話 発散

2022年9月24日 土曜日


複製人間との共同生活は、いいところも多いが、(とても)似たもの同士との生活はストレスもたまる。


毎朝のランニングはストレス発散にも大いに貢献しているのだが、あいにく今日は早朝からかなりの大雨なので走れない。


そんな日は陽気のせいもあってかストレスが強めに感じる。


洸一は陽一をちらっとみる。やはり同じくストレスを感じているようだ。


きょうは土曜だし、気晴らしにどこかへ出かけるという手もあるが、この天気ではあまり外出する気にもなれない。なにかよいストレス解消の方法はないかと考えていると、陽一の方から提案してきた。


「洸一、マッサージやってあげよっか」


なるほど。ランニング前後は軽くダイナミックストレッチ(動きながらのストレッチ)はやっているものの、ストレッチはあまり意味がないとプロのランナーから聞いたことがあるのでやってなかったが、マッサージなら血行も良くなり疲労回復にもいいかも。


「いいね。きのうロング走ったからリカバリーにいいかも」


今日は雨の予定だったので、昨日はいつもより長めに20㎞ほど走った疲れが若干残っている。


「んー。じゃうつぶせになって」


マッサージは受けたことはあるものの、他の人にやってあげたことはあまりない。ツボもわからないし、どのぐらいの強さでやったらいいかもまったく自信がない。


どこでおぼえたのか(自分は習った記憶がないので陽一もないはずだ)、陽一はなんか手慣れた感じで首から肩、肩甲骨、背骨とじっくりもみほぐしてくる。強さの加減もいい。


「うまいじゃん。どっかで習ったことあったっけ」


「洸一もやってみればできるよ。こういうのは自信をもってやってみるもんだよ。それに自分の身体じゃないか。やって欲しいようにやればいいんだよ。


そんなもんだろうか。逆の立場だったら自分もそう言うのだろうか。


腰からふともも、ふくらはぎから足裏へとひととおりマッサージしてもらうと、ウソのように身体が軽く暖かくなった気がする。


「さんきゅ陽一。じゃあ今度はぼくがやってあげる」


洸一はあらためてふたりでいることのありがたみをかみしめていた。

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