第6話 以心伝心

「あっまったく同じこと考えてた」


双子は以心伝心というが、双子以上に同一性が高いぼくらは話さなくても通じてしまうのかもしれない。


非科学的だけど、あたかも量子もつれのように常に共鳴しているような気がする。


そんな風に洸一が感じるのには理由があった。二人には各種バイタルセンサーが装着されていて、常時リアルタイムでプロジェクト本部にモニタリングされている。これは万一の事故や急病、あり得ないことではない二人の争いの予兆を捉えるためでもある。


何より、そもそもミッションの目的は、史上例の無い再生人間とオリジナルの間でどのような変化が起きるかを正確に把握することであり、開発者たちはそれらが立てた仮説が正しいか、或いは仮説を再構築もしくは進化すべきかを判断する仕事をしている。


だがまだ洸一には、自分がいまこのときに陽一が考えていることがわからなかった。


というより、わかるのが怖かったというのが正直なところだ。自分がヨコシマなことを考えているのが相手にわかったらやはり恥ずかしいだろう。


洸一には克服したいことがあった。それはミッションの目的と通じるところがある。

人間の日々の思考は99%以上が同じことの繰り返しだという。

悶々と同じことを、くよくよ悩み続けるのが最たる例だ。

洸一は時にそんな状態にある自分が嫌だった。

もし陽一を通じて自分の心理状態を知り、恥ずかしいと思うより前向きに考えを進める方が自分の成長につながるのではないだろうか。

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