恋物語

奥田咲緒

恋物語









「翔太くんは恋したことある?」

突然そう尋ねられた。僕は軽くうなずき

「あるけど、なんで?」

「なんとなく。知りたかったから」

僕はそう言われ、話を始めた。








 ある春の日のことだった。近所の武蔵野公園に散歩に出かけた日のこと。サトザクラが綺麗に咲いた園路沿いに彼女はいた。僕は一目惚れと呼ばれるものをした。高校の入学式で彼女と再会した。僕は運命だと思った。




 僕は徐々に彼女と仲良くなった。クラスが同じこともあり、ちょっとしたことを話しかけたり、聞いたり。僕は勇気を振り絞って、一緒に出掛ける約束をした。初めてのデートだった。僕達は他愛もない話をし、一緒に歩いた。それだけのことで僕はとてつもなく嬉しかった。

 僕は本当に彼女のことを好きになった。それで告白をして付き合うことになった。彼女も僕が気になっていたらしい。僕達はデートを繰り返し、少しずつ体も心も距離が縮まっていた。




 けれど、僕には悩みがあった。最近学校から家に帰るときの道で後ろに人影を感じる。最初は気のせいだと思い、少し様子を見てみたがやはり毎日僕の後ろをつけていた。そいつは僕のストーカーだった。

 



 僕はすぐに母さんに相談した。母さんは僕のことが大好きだ。父さんは僕が小さいときに亡くなったが、シングルマザーとして僕を大事に育ててくれた。マザコンとまではいかないけれど僕もそんな母さんのことが大好きだ。最近は僕が父さんに似てきたと言って喜んでいる。母さんはとても僕のことを心配してくれた。もちろん彼女のことも話した。家によんだこともある。僕が席を外しても、母さんと彼女は楽しそうに話したり、二人で出かけるときもあった。




 時は流れ、彼女と出会って8ヶ月後ぐらいだろうか。彼女は忽然とこの世からいなくなった。僕が彼女を初めて見たあの武蔵野公園で遺体は見つかった。容疑者はまだ分かっていない。でも、僕はあのストーカーだと今でも思っている。彼女は人柄がよく人望もあったため恨まれることはしていないと思うからだ。母さんにストーカーの話をしてからはずっと姿を現していないのは、彼女を殺害する計画を練っていたと思った。そうずっと思って今まで生きてきた。




「それで君と出会ったんだ」

今僕には沙織という新しい彼女がいる。僕と沙織は武蔵野公園のくじら山で出会った。彼女をなくして一人でいたとき声をかけてくれた。僕にはそれがとても嬉しかった。彼女をなくしたばかりなのに、沙織をすぐ好きになったのはとても罪悪感があったが、僕達は付き合うことになった。




こうして今にいたる。

『ガチャッ』

「あ、母さん。新しい彼女を連れてきたんだ」

今僕達は僕の家にいる。沙織を紹介するためだ。

「あら、可愛い子ね。今度二人で出かけようかしら」

母さんと沙織は明日出かける約束をしていた。僕は二人が仲良くなってよかったと思った。

 



 その後何が起こるのか僕は知る由もない。







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恋物語 奥田咲緒 @sakiooo

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