八戒 鼠と猪

 その女の子はすごく小さく、まるで小学校低学年の女児そのものだ。

「あー、また変な情報網か、鼠乃その。」

「変じゃないです。これは私の使千器ですってば。何度言えばわかるんですか。」

 虎閃が鼠乃をいじめながら政府庁に向かって歩き始める。その道は彼らにとっては行き慣れていて、まるで家族で家に帰るような、そんな和やかさだった。


 政府庁はすごく大きな建物だ。英政府王国の中で1番高く、1番広い土地で、一番偉い人達の集まる場所。多くの人はここに憧れ国家試験に挑戦するが、入れる人数は30000000分の1以下。募集人数に制限は無いが、その難しさゆえ、一般からの合格率は低い。

「久しぶりに見たな。」

「あなたの代わりはもう居ますよ。多分中にいます。」

「ワシは医務室に行くからの。」

「なら私達は先に会議室行きましょうか。」

 牛丸を除いた4人は会議室へ向かう。

 会議室は静かだが、人が3人ほどいた。

「久しぶり〜。お疲れ様〜!蒼猪ちゃんもいるね。」

「げ、アイかよ。気持ちわりぃな。」

「そんな事ないよね〜、虎閃ちゃんと光狼ちゃん。」

「「あー、そっすね。」」

 1人目はアイ。4人いる世界政府の一員で戒盾十三人が警護する警護対象の1人。戒盾にいつも絡んでいる女。

「またベタベタしてるのか。そろそろ戒盾離れしろよ。」

 2人目はエヌ。この人も警護対象の1人で、4人の中では兄貴分肌男。

「久しぶりお姉。出来れば死んでて欲しかったけど。」

 3人目は紀猪きい。蒼猪の妹で、彼女は蒼猪が抜けた後の戒盾の猪となった。

「お姉早く使千器渡してもらえる?その為に連れてきてもらったんだけど。」

「あんた持ってんでしょ。なんならあんたがあたしに渡しな。」

「あー、まぁまぁ。リオンが来るまで大人しくしてようぜ。」

 アイとエヌは会議室から外し、皆はそれぞれの席につく。そして戒盾最強の獅子の名前を持つリオンを待つ。

 ガチャ――

 会議室の扉が開き、1人の男が現れる。

「やぁみんな元気してた?俺は元気100%って感じ〜。虎閃に光狼!任務ご苦労さん。蒼猪ちゃんは久しぶりだね。ちょっと太った?」

 立って待っていた蒼猪が銃をリオンの喉元に近づける。

「ごめんごめ〜ん、冗談だから閉まってね?怖いよ〜。」

 戒盾最強の男は驚く程フランクでおチャラけていた。髪は金髪で重そうな鎧に、剣を収納した盾を背負っている。

「さて、次の任を与えるね。虎閃は北の谷西露やしろに、光狼は赤丸の左にある北夕鮮きたゆうせんにいる十二支を倒して使千器を回収してきて欲しいんだ。誰を連れて行っても構わないよ。」

「ああ、あと、鼠乃、あれを渡しておいてくれ。きっと虎閃と光狼の役に立つよ。ほんじゃバイビー。」

 リオンの会議室に居た時間、わずか5分足らず。周りは呆れていた。

 リオンから任務を受けた彼らは、十二支を討つための準備を整え各々の目的地へ向かっていった。

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