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蒼猪

一戒 終わり

「んん。」

 彼が目を覚ますと、見知った顔がこちらを覗いていた。

「また居眠りか。」

「わりい、あー、夢見てたわ。」

「なんでもいいけどよ。ちゃんと見てろよ、虎閃こせん。」

「へーへー。わあーってる、光狼こうろう。」

 彼らは世界政府警護人、『戒盾十三人かいじゅんとみひと』の一員。『戒盾十三人』のメンバーは、名前に動物の名前が入っていて、その動物の種類で強さが分類分けされている。上から、獅子、龍、猿、蛇、猪、馬、狼、虎、鳥、羊、牛、兎、鼠の13段階に分かれていて、虎閃は8番目、光狼は7番目ということになる。

 彼らが今受けている任務は、政府庁から遠く離れた東の島にいる武人を探す、という任務だ。危険度は10ノウチ6、中間辺りの任務で、報酬は750ネイ。東の島の通貨に変換すると約75万。

「なぁ、まあーだ連絡ねぇの?」

「特徴はわかりやすいからもう連絡が来てもいいはずなんだけどな。」

 


虎閃と光狼は、5日ほど前に東の島の政府支部に出向き、探している武人の特徴を伝えていた。

『俺は光狼。見た目はこれ、両手が義手、黒衣に身を包んでて、背には刀、太ももには銃が差してある。見つけたらこの宿に来て報告してくれ。』

「あー、あれから結構経つんじゃねー?」

「んな事言われても。ならおめぇーが探しゃいいだろ。」

 ガヤガヤガヤガヤ

「んだよ、あー騒がしい。」

 彼らが寝泊まりしている宿は、この島には多くあるアパートと呼ばれる形のもので、4階まであるうちの2階に虎閃と光狼は泊まっている。部屋の中からも聞こえる騒ぎに、虎閃は窓から様子を見た。

「あ!」

「るせーな、なんだよ。」

 虎閃は慌ただしく扉から出ていき、バタバタ階段をおりて騒ぎの中に入っていった。光狼も虎閃の後に続いてゆっくり騒ぎの正体を確かめに行った。

「あんた、もしかして。」

「ん?」

 両手の義手、黒衣に刀、ももに銃。彼らの探している人物の特徴を捉えている。

「あー、ちょっと来てくれ。」

 虎閃は黒衣の武人の手を引いて自分らの泊まっている部屋に連れて行く。

 ガチャ

「あー、あんた、蒼猪あおいさんだよな!?」

「その名前で呼ばないでくれる?てかなんであんたらここにいるの?あたしのファン?」

 彼らが探していたのは戒盾十三人の一人である、いや、戒盾十三人であった蒼猪。かつての猪の座にいた彼女は、とある事件をきっかけに戒盾十三人を辞めざるおえなかった。

「殺しに来たの?」

「あーいや、政府が連れて来いって。」

「ふーん、多分行っても殺されるだけだしなぁ。」「あー、戒盾なんで辞めたんだよ。」

 虎閃の質問を聞いた蒼猪は、少し下を向いて呟いた。

「また今度な。」

「んで、どうする?着いて来る?見て見ぬふりした方がいい?」

「んまぁ着いて行ってやるよ。暇だしな。」

 虎閃と光狼は、見つけた蒼猪とはるか西にある政府庁に向かい始めた。

「あー、まずは飯だな!」

「そーだな!」

「程々にしろよ…。」



 きみか、そこにいるのは。

 気づいているのは君だけじゃない。

 このいまわしき呪縛。どうすればいいのか。

 これを手にした君は分かっていると思う。


 

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