ホームステイをしに来た従妹が緊張していたから遠慮しないで何でも言ってと言ったら、キスされて結婚を迫られました
タイロク
1年目
第1話 その再会は……
「お帰りなさい、お姉ちゃん」
リビングのドアを開けると、見知らぬ美少女に出迎えられた。
長い金色の髪と青い瞳。日本人離れした見た目の、とてもキレイな少女だった。
思わずドアをそっ閉じ、一度家を出て表札を確認する。
「
うん、間違いない、私んちだ。
じゃあ、さっきの子は誰だろう? あ、アレかな。幻覚かな。
最近バイト……もとい、大学が忙しかったから、疲れてるのかもしれない。
よし、じゃあ改めて……
「お帰りなさい、お姉ちゃん」
再び見知らぬ美少女に出迎えられた。
「ただいまなさい」
動揺しているらしい。私の口から出てきたのは、ちょっとズレた言葉だ。
すると、謎の美少女はおかしそうにクスリと笑う。
やっぱり、この子は幻覚じゃないらしい。
じゃあ、この美少女誰だろう? 訊いてみようかなと思ったけど、ちょっと待って。なんか向こうは私を知ってるっぽいし、私も覚えてるていで行かなきゃ!
「あっ、どうも久しぶりぃ~。すっかり立派になっちゃってぇ~」
「……あんた何言ってんの?」
この間、私の小学生の時の友達に会ったときのお母さんの物真似をしていると、キッチンの奥からご本人が登場した。
「まったく、もう二十歳だっていうのに。変なことばかりするんだから」
持っているトレイの上には、お茶とお菓子が乗っている。
「あ、すみません。手伝います」
ちょっと慌てた様子の謎の美少女。対するお母さんは、いつもの通り、どこかのんびりした口調で言う。
「いいのよ、アリスちゃん。気にしないで」
……アリスちゃん?
あれ、その名前、どこかで聞いたことがあるような……
私は改めて、目の前の見知らぬ美少女を見る。
身長は結構高い。多分、私よりも頭一個くらい。繊細なくらいにきめ細かな白い肌。大きな青い瞳は宝石みたいで、腰まで伸びている金髪も宝石みたいにキラキラ輝いている。
その姿が、記憶の奥の、姿がぼやけた一人の少女と重なる。
「アリスちゃん……?」
「なに?
なぞるみたいに名前を呼ぶと、きれいな顔で笑いかけられた。
その顔が、さっきまでぼやけていた少女と、今度はきれいに重なる。
それは紛れもない、従妹のアリスちゃんだった。
最後にアリスちゃんに会ったのは、もう十年も前になる。
アリスちゃんはお母さんのお姉さんの子で、昔はよく一緒に遊んでいた。
見た目通り、アリスちゃんはハーフだ。お父さんがイギリス人の実業家で、その仕事の関係で彼女の一家はここ十年はずっとイギリスにいた。
だけど……
「私ね、今年からこの近くの高校に通うことになったの」
とのことらしい。
しかも、それだけじゃなくて……
「それをおばさんに話したら、じゃあ家にホームステイに来なさいって言われて、お言葉に甘えることにしたの」
「この間姉さんに相談されたのよ。アリスちゃんが心配みたい」
おばさんことお母さんが言った。
私とアリスちゃんは全然連絡を取っていなかったけど、お母さんたちは連絡を取っていたらしい。
「そうだったんだ……」
私はといえば、ちょっと置いてけぼりを食らっている。
えっ、ってことは、
「アリスちゃん、今日からここで暮らすってこと?」
「今そう言ったじゃない」
お母さんはなぜか呆れた様子。
「……あの、ひょっとして、迷惑だった?」
アリスちゃんが不安そうに言うので、私は慌てた。
「そんなことないよ! ちょっとビックリしただけ!」
まずい! このまま黙ったら気まずくなりそう! 話変えなきゃ!
「そうだ! アリスちゃんの歓迎会しようよ! ね、いいよね、お母さん」
「ええ、もちろん。ていうか、最初からそのつもりだったから」
でも、乗り気なのは私たちだけ。アリスちゃんは遠慮気味だ。
なので、半ば無理やり歓迎会を開いたんだけど、やっぱりアリスちゃんは遠慮気味というか、ちょっと大人しかった。料理も、あんまり食べていなかったし。
アリスちゃんて、こんな子だったっけ。私の記憶の中のアリスちゃんは、もっと明るくて、いつもニコニコしてるんだけど……
慣れない環境で、緊張してるのかな?
なんて、この時の私は気楽に考えていた――
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