無題の英雄と星の物語~異世界で抗い続ける男は英雄へと至る~
すらいむはニートで最強
第1話 その憧れは……
現実が嫌いだ。自分の人生を楽しくできない自分自身が嫌いだ。そう言って諦める自分が嫌いだ。
その逆に本は良い。
沢山読んだ。自分の人生の何倍もの感情をくれた。
本は星のように輝いている。
希望があり、絶望がある。
好きがあって、嫌いがある。
皆があって、孤独がある。
僕にはなにもない。
もっともっと沢山読んだ。まるで何年も共に旅しているような気持ちになる。
本は夢のようにふわふわして……でもそれが良い。
主人公がいて、脇役がいる。
勇者がいて、魔王がいる。
味方がいて、敵がいる。
僕には味方も敵もない。
『隕石が降ってきたら面白いのに』
そんなことを考えても現実にそんなことなんて起きやしない。
『本の読みすぎで現実との区別が』
なんていうが、むしろそうなれたらどんなに幸せだろうか。
神様が僕にくれた物語はとても一冊の本にできない。
精々メモ帳の箇条書きくらいになるぐらいだろう。
決して嫌なことだけがあるとか楽しいことが無いわけではない。
ただ物足りないd
と、俺はそこでキーボードから手を離す。
モニター越しに見える文章は俺の願望なのかただの妄想なのか、どちらにせよ非現実的なものだ。
「主任~?今日一杯やりにいきませんかぁ?」
「いや。俺はやることあるから遠慮しておくよ」
「あ、そーなんすか?じゃあ失礼させてもらいまーす!」
そう言って軽薄そうで律儀な部下は会社をあとにする。気を使って誘ってくれているのだから良いやつなのは間違いない。
思考を切り替えてデスクに向きなおす。
年はもう37で恋人なし。恥ずかしながら童貞だ。
ルックスが悪い訳でもない、と自分では思っているが女から見ると何かが足りてないのだろうか。
そんな俺の趣味はネット小説を読むこと。たまに書いたりもするが書くのが遅い上に下手くそな文だ。
無限に広がる世界を感じるという意味ではネット小説は最高のものだ。いつでも読めるうえにお金を使う必要もないから気軽に読める。
「残りの仕事終わらせないとな……」
ーーー時計を見れば夜中の12時。作業をしていたらいつの間にかこんな時間。
「帰るか……」
誰もいないオフィスルームに声が溶け込んでいく。
声を発しなければ動く気にもなれない。
「はあ……何かどっかで買っていくか……近くにコンビニあったかな」
スマホでマップを見ながらの独り言。
「おいお前!あぶねえ!!」
「っ!?」
ドンッ! 衝撃が体に走る。
体から何かが抜け落ちるような感覚がしたような気がした。
「っ……!……いっ!おい!」
「んぁ?……っ!?いっでぇぇぇ」
「おお!気がついたか!?動かねぇほうがいいぞ」
気がつけば見知らぬ誰かが俺のすぐそばにいた。
金髪、低身長というか子供。やんちゃなクソガキっぽい感じだ。
「ここ、は?」
いや、本当にどこだここは……見たこともどころか聞いたこともない場所だぞ。
沢山の本がある。というか本棚の数がすごい。
まるで図書館のような、じゃなくて!
コンビニに向かう途中何かにぶつかり……今に至る。
どうしてこんなところにいるんだ。病院ではないはずだ。
「おいジジイあんちゃん起きたぞ!!」
金髪の子が呼ぶと突然目の前に初老?の男が現れた。
今のはどうやって出てきたんだ?
「あんたは誰だ?どうして俺はこんなところにいるんだ?」
「ふむ。すまなかった。どうやらお主を巻き込んでしまったみたいでの……話せば長くなるがの」
話をまとめるとこんな感じだ。
この男と男の子は俗に言う神様らしい。そしてちょっと地球で気晴らしでもしようと思って次元に穴を開けたところ発生した衝撃波に俺を巻き込んでしまったらしい。
信じられん。
「ああ。信じられない、信じたくもない。」
俺は今すぐ帰って飯を食べて寝たいのだ。
「それなんじゃがの……ーーー」
「帰れない!?え!?俺死んだの!?!?」
ほう?
ほうほう?
ほぉぉお?
「お前何言ってるんだ?」
「はあ。生意気なクソガキを連れ込んでしまったようじゃのぉやれやれだわい。それに理解力もないとな」
何だか酷い言われようだな。
「おう。あんちゃん悪いなこのジジイは自分のミスに対して申し訳なさを感じることができないんだ」
概ね同意するぞ。
「まあお主は死んだんじゃ。あとはわかるじゃろ?ほれ行ってこい。わしの権能も一緒に持ってけ」
「あ!?おいジジイ!もうちっと説明を……ったく……ごめんよあんちゃん俺の加護と権能も授けておくから何とかあっちでも上手くやってくれ」
ああ。なるほど……?
ここで俺はようやく気づいた。俺は地球で死んだ。
そしてこれは……あれだあれ。
テンプレ。でもこんなお粗末な転生物語を書くやついるなら教えてほしいぐらいだよ。俺でもドン引きするわ。
「異世界転生、か」
明日の仕事どうすっかな。いや明日から会社行かなくてっていうか行けないのかとか考えながら俺の意識は遠退いていった。
「「計画通り」」
何やら二柱の神様がなにか言ってたが俺の意識はすでになくなっていた。
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