休暇、海、痴れ事。

 休日……天気の良い炎天下。

 目の前に広がる海。


 そして、水着の美少女たち。


 ライトに誘われ、ブレイブ家の所有する海辺に来ている。


 俺だけではなく、俺が知るほとんどの人間を招待してくれている。



 スタイルも良く、巨乳率も高い……


 「目のやり場に困るよな……」

 そう呟いていると……


 「あ……あぁ……レインか」

 そう俺は目の前の水着女子に挨拶をする。


 「お前……今、失礼なこと考えておったな」

 俺がレインの全身を見た反応にクレームが入る。


 「前にも言った……私が普通なのだぞ!」

 そう力強く主張する。



 「毎度……」

 サングラスをした長い紫色の髪の女性。

 先ほど挨拶を済ませた、今日はじめてあった女性。


 リプリス=オーダー


 これまでに、ライトが俺の時代のモノを取り寄せていたトリックとなる人物。


 魔力に依存するが……どんなものでも取り寄せることのできる能力者。


 彼女の中である程度、イメージが出来たもの。

 特に異世界となればそれなりの魔力を消費するようだが、

 こうして、俺の世界のものをいくつかこの世界に持ち込んでいる。


 食材や調理資料名モノを取り寄せ、ライトはそれらの料理を会得していたようだ。



 そして、せっかくだ……簡単な料理なら俺でもできる。

 麺、キャベツ、豚肉、玉ねぎ、もやし……紅しょうがに青海苔……ソースや塩やコショウの調味料が並んでいる。

 リプリスに頼んで揃えてもらったもの。


 目の前の鉄板でそれを調理していく。


 「何を作っているんだ」

 興味心身にレインが眺めているが……ほかの連中も集まってくる。


 「なんだ、小僧……随分と良い匂いを漂わせているではないか」

 アストリアがすっかりお気に入りの缶ビールを片手に現れる。


 「簡単で最強に美味い料理ったら……これだよな」

 そう一人で呟きながら……



 「まぁ……素人の調理だが……食ってみてくれ」

 そう、容器に取り分けるとアストリアに差し出す。


 「頂くとしよう」

 そう言ってアストリアがそれを食す。


 「おぉ……美味い、そして、これまた酒というモノに合うな」

 そうアストリアの酒が進む。


 「ずるいぞ、わたしにもよこせ、レス!」

 そうレインが怒鳴るように言う。



 「わ……わかった」

 そうレインにもそれを渡す。


 「美味い……やるではないかっ」

 レインからもそう評価を得る。



 いつの間にか、ヴァニ……クリア、ウルハ、クロハ……と行列ができていた。


 一通り配り終わり……


 ライトとリプリスへと配る。



 「ほぉ……これが焼きそばというものか」

 ライトが興味深そうにそう言い、


 「……俺の作ったデキだし口に合うかはわからないが……」

 そうハードルを下げようとするが


 「君が作ったものだ……まずい訳がないだろう」

 そう返される。



 「なるほど……これなら私にも似たようなものが作れそうかな」

 そうリプリスは言うと……


 「私の店のレパートリーに追加させてもらおうかな」

 そうリプリスは言う。



 「……それはそうと……あんたのその能力は、異世界のものをどれくれい取り寄せられるんだ?」

 そう尋ねる。


 「……だいたいは大丈夫か……と思うけどね、別に私がそこまでイメージできていなくても、仮にあんたのイメージが完璧なら後は魔力でなんとか形にできる……ただ、機会のような機能を備えているようなものは、かなり具現化するのは難しいし、欠陥が発生しやすい」

 そう説明を受ける。


 だとすれば……漫画や小説はもしかするとなんとか……なるかもしれないな。

 そう、機会があればお願いしようかと思った。

 食材をここまで再現できる能力だし、俺が思っている以上には再現率の高い能力だろう。



 しかし……ながら……

 リプリスさんもなかなかのスタイル。

 髪の色に合わせた紫色のビキニ……思わず目をそらすと、


 「ぐっ……」

 変わりに飛び込んだのは、人の領域を超えた、誰もが理想とするようなボディ……

 瞳の色に合わせたワイン色のビキニに身を包むライト。


 「どうだ……君のために新調したんだ」

 目線に気づくライトがそう言うが……


 「ちょっと……届けてくる」

 俺は、出来た焼きそばを別な場所に届けるため歩き出す。


 海水浴のチェアで寝そべる黒髪の女性。


 「良かったら食うか?」

 焼きそばを差し出す。



 「……お節介だよな……あんた」

 そうツキヨが呟く。


 「お世辞でいいから、気が利くと言ってくれ」

 そう返す。


 「せっかくだ、頂くよ」

 そうツキヨは俺からそれを受け取る。


 「おまけ」

 そう俺は付けたし、透明な取り皿のふたの上にぬいぐるみを一体置く。



 「な……ななな…こんな愛くる……こんなもの……」

 ツキヨワールドが広がる。



 「チョ〇ボっていう……俺の元の世界の生物……というか、その世界でも架空の生物なんだけどな……リプリスについでに取り寄せてもらった」

 そうツキヨに言う。


 「まぁ……よかったら貰ってやってくれ」

 そうツキヨに言うが……俺の声が届いているかどうか……


 眼鏡をくいっとあげ……

 「まぁ……明日、明後日には宇宙から妹が帰ってくるかもしれないから……プレゼント用に預かっておこう」

 もはや、言い訳が支離滅裂になっている。



 「あぁ……そうしてくれ」

 そう言ってその場を離れる。



 「ほら、レスベェ……新しいお友達だ、レコボちゃんだ……仲良くするんだぞ」

 ふと、後ろを振り返ると、いつの間にか取り出した縫いぐるみと今渡した縫いぐるみを対面させているツキヨの姿がある。


 俺の目線に気がついたツキヨは顔を真っ赤にさせながら、チェアの横のテーブルから飲みかけの飲み物を投げ飛ばす。

 俺はその投棄物から逃れるように走り去る。


 顔を真っ赤に叫ぶツキヨをバックに……俺は足を止める。


 目の前には、仲良く楽しそうにボール遊びをしている、レインとクリア、クロハとリヴァーがいる。


 きゃーきゃー、時にぎゃーぎゃーと言い争っているようだが……



 「焼きそばとやらのお礼だ……小僧、お前も飲め」

 なんとなく、4人を眺めていた俺にアルコール缶が差し出される。


 あの日から今日までにリプリスからいくつ買い占めたのだろうか。


 褐色の肌……健康的でライトに負けぬスタイルを持っている。

 水着からこぼれそうなボディを恥じることなく見せつけながら、俺の横に立つ。


 「なんだ……小僧、水着姿の女に緊張しているのか、思ったより初心な男の子だな」

 そうアストリアは俺に笑いながら言う。


 「私なんかを女として意識しているのか」

 そうアストリアは俺に尋ねるが……


 「……当たり前だろ」

 目を反らしてそう答える。


 アストリアは楽しそうに笑いながら……


 「それはそうと……裏生徒会との接触、決闘……この世界に来て一番日が浅いっての言うのに、誰よりも踏み込んでいるではないか」

 そうアストリアが少し真面目に切り出す。


 「好きでそうしている訳じゃないけどな……」

 向こうのほうからやってくる。


 「……説教なら私からしよう」

 そう思いもよらなかった女性が隣に現れる。


 「フレア……?」

 特別クラスの担任教師。


 「私も1本貰うぞ……」

 そう言って、アルコール缶を1本手に取るとそれを勢い良く飲み干す。


 「お……美味いな、これ」

 そうフレアは言い、あっという間に1本を空ける。


 「正直……予想以上の活躍をしてくれてるよ、レス」

 そう、フレアは俺に言う。


 「交流戦……生徒会との対戦……そして裏生徒会との決闘」

 そう……目線は俺とは別な場所を見ながら、


 「危険を顧みず、誰かを守る……本当に16歳かと疑いたくなる立ち振る舞いだがな」

 そう苦笑しながら……



 「俺は勇敢でも、冷静でもない……誰かを守るってのは、無謀、臆病な者にはできない……そんな後者なやつに、それでもそんな能力があるって言うなら……そんな奴が少しくらい夢みてもいいだろ」

 そう俺は返すが……


 「まぁ……確かに立派なことだけどな……」

 そうアストリアは言うが……


 「だが……小僧、何処かでこう考えていないか?自分はもともとは部外者……だと」

 そう冷たい目でアストリアが俺を見る。


 「自分が部外者だから……何かあれば犠牲は自分だけでいいと……」

 そう冷たく心の中をのぞかれる。


 「勇敢だろうが、無謀だろうが……冷静だろうが、臆病だろうが……人を救えたのなら、それはそんなものは関係なくお前の功績だ」

 そうフレアは隣で答える。


 「……私が言いたいのは、それと同じくらいに自分を大事にしろ……誰かを守り、そして自分を守れ臆病者レス

 そう、フレアが言う。


 「クラスを守る……ついでに貴方フレアも守る……その言葉に責任を取れ、その言葉に救われた教師ばかもいるんだよ」

 そうフレアは俺を見て笑い……


 「誰かの犠牲で救われた世界で……そのおまえかが遠い何処かで、お前を救えて良かった……じゃないだろ、そこで笑って喜んでいる奴がお前が本当に救いたい奴か……救われる側のその後の想いまで守ってやれ……」

 そうフレアが2本目の缶を空けそう言った。


 こっちの世界に来るまで……ずっと……


 「変わることが怖かった……生きるってのは……ただ呼吸していればいいと思っていた……起きて、周りを見て、周りと同じ事をして……寝て……また起きて……、それが酷くつまらなくても……変わることも、消えることもできない……どうしようもない臆病者だった……」

 俺は遠い記憶の誰かを見つめながら……


 「正直……未だに混乱してんだけどさ……、いきなりこんな世界に放り込まれて……いきなり特殊な能力が使えるようになって……その能力も臆病者に相応しい防御に特化した能力で……」

 そんな世界で、昔のあの頃の俺と同じように……

 まるで世界の邪魔者のように……

 そんな風に扱われている人が居れば……


 「助けたいさ……」

 俺はそう呟き……


 勝ち組、気取った連中に言ってやる……


 「臆病者……なめんな」

 変われなくても……

 今を守ることはできる……


 無謀でも……臆病者は生きている。


 「まったく……お前の言葉は本当に頼りなく情けない」

 そうフレアは俺に返し……


 「なのに……今までに聞いた、他の誰の言葉よりも魅力的だよ」

 そうフレアは俺に微笑みかけ、3本目の缶を空ける。

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