03 義妹 その3
神様に<握力強化スキル>も<腕力強化スキル>も貰えなかった真菜には、そのか細い身体では和真をどうこうできず一瞬ヤンデレ目になるが、すぐに元に戻すと和真と咲耶の間に入り、表面的には笑顔を作って3人で登校をすることにする。
彼女は外では、優等生をできるだけ維持しているので、作り笑顔はお手のモノある。
「おはよう、咲耶」
和真が真菜越しに咲耶に朝の挨拶をすると、彼女も返してくれる。
「おはよう、和真。おはよう、真菜ちゃん」
「咲耶さん、おはようございます。もっと、早く登校してくれればいいのに、空気読めないですね」
真菜は笑顔で挨拶を返した後、続けてその笑顔のまま咲耶に理不尽な毒を吐く。
外では優等生を維持する真菜は、和真と距離の近い女の子に対して、内心では敵視しながら作り笑顔で接し優等生美少女義妹を演じている。
だが、幼馴染の咲耶は真菜の正体を知っており取り繕う必要がないため、周囲の目を気にして、表情は笑顔であるが会う度に牽制を込めて毒を吐いている。
まあ、さっきの腕を引っ張る件を見ていた者は、<この子ヤバイな>と感想を持ったであろうが…
しかし、咲耶は年上の余裕なのか、面相だから相手をしたくないのか解らないが、毎度の真菜の毒舌をムキになって言い返してこず、年上の余裕といった態度で受け流すので、真菜にとっては咲耶のその余裕も気に入らない原因である。
【討伐者育成学校】は街の郊外に建てられており、その理由は広大な敷地面積を確保するためと、土地代が安いからである。
それゆえ、同じく郊外の土地の安い地域に、家のある和真達は20分で登校できる。
決して、ご都合主義ではない……
とは言っても、この【討伐者育成学校】は、各地にある支部の一つであるためそれほど大きな施設ではなく、公立の学校ぐらいの敷地面積で、生徒は基本的には和真達の住む街と隣街の子供達であるため、これぐらいの施設面積でも充分である。
<自分達の通う【討伐者育成学校】が、偶然この街にしかも近くに建っていてよかったー!>
と、喜ぶ和真であった。
もう一度言うが断じて、ご都合主義では……
3人は真菜が真ん中に陣取って笑顔でヤンデレオーラを出しているため、特に会話することも無く、通学路から校門をくぐり、校舎までの道を無言で歩き続ける。
校舎内に入ると広いエントランスホールがあり靴箱はない。
それは、【討伐者育成学校】が戦う者を育てる場所であるため、「常在戦場」の精神からいつでも戦えるためと校舎内は清掃が大変になるが土足で行動するようになっている。
ここで、二年の和真と咲耶、一年の真菜は分かれることになり、和真は思わずホッとしてしまうが、表情は変えないように心掛ける。
何故なら、このヤンデレ義妹がその表情の変化を見逃すはずがなく
「何を解放されたみたいな表情をしているのですか!? 私と別れることがそんなに嬉しいのですか!? これは、もうお仕置きですね! 可愛い
こうなってしまう可能性は充分ある。
だが、彼は彼女のことをまだ過小評価していた…
「
(マジか…)
このヤンデレ義妹様は、親ですら気づかないかもしれない表情の変化に
“恐ろしく速い表情の変化… 私でなければ見逃していたわね”
とばかりに気付いてくる。
「なっ 何を言っているんだ。馬鹿だな~。昨日見たお笑い番組を思い出していたんだよ!」
「ああ、そうだったんですか」
真菜は心が読める訳ではないので、和真がそう言うと意外と大人しく引き下がる。
その理由は、彼女には始業を告げるチャイムがなる前に、もっと言っておきたい事があったからである。
「
「誰が、茶髪ビッチよ!」
真菜は完全なる偏見で、自分にとっても幼馴染の咲耶に暴言を吐く。
「大丈夫だ、
「和真…。それ、本当に自慢じゃないわよ。自分で言っていて悲しくならない?」
「悲しいに、決まっているだろう…」
和真は真菜に安心して、早く立ち去って欲しくてそう言ったが、咲耶のツッコミを聞いて思わず泣きそうになってしまう。
そうこうしているうちに、予鈴のチャイムが校内に鳴り響き、真菜は泣く泣く<浮気しないこと!>と言いながらその場を後にする。
「俺達も教室に急ごう」
「そうね。新学年そうそう遅刻なんて、不味いわね」
和真と咲耶も駆け足で、自分のクラスに移動する。
和真のクラスはCクラスで、最下位のクラスである。
だが、あくまで討伐者=戦闘能力であり、学力が低いというわけではない。
しかし、Cクラスの者達は、多くが後方勤務に就くことになる。
和真が自分のクラスの教室に入ると、何やらクラスがざわついている。
席につくと一年からの親友<大友郁弥(おおともいくや)>が近寄ってくる。
郁弥は茶髪でイケメンよりの顔であるが、所謂”オタク”で”マナの力でどうにかして、2次元に入りたい”と常日頃から公言している”剛の者”であり、そのため友達は少ない。
【外れ】能力のお陰で、一年の時に実技の組でハブられていた和真と組んでくれたのが、彼だけであり、それ以来の友達である。
(真菜からしたら、茶髪の郁弥もヤリ○ンになるのであろうか…)
和真は郁弥と朝の挨拶を交わすと、彼に教室のざわつきの理由を聞いてみることにした。
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