第13話 ベッドの上のあなたへ
病院の入り口に到着して小走りで病室へ向かった。
ずっと足元を見ていた。
ふと、前を見ると母が泣いていた。
その姿を見ると我慢していた涙が溢れそうだった。
心が苦しかった。
あんなに元気だったおばあちゃんが亡くなっただなんて認めたくなかった。
昼食に行く前には寝ていたけど、息をしていたのに、
止まっているなんて思いたくなかった。
病室に行くとみんな泣いていた。
妹もいつもはしかめっ面が多いおじさんも泣いていた。
室内には無機質なピーという音が鳴り響いていた。
おばあちゃんの姿を見ると今まで我慢していた涙が泉のように溢れ出した。
大声で叫びたいくらい悲しかった。
ハンカチもティッシュも持ってきていなかったから洋服の袖で涙を拭った。
拭っても拭っても涙は止まらなかった。
洋服に大きな濡れたシミが出来ていく。
必死に嚙み殺していた嗚咽も口の間から漏れてしまう。
みんな集まりきると、お医者さんが来て、心音の確認をし、
「午後、3:24分、、お悔やみ申し上げます」
そう、静かに告げた。
さりげなく、お医者さんは退出して、家族だけの時間にしてくれた。
しばらく、みんな、お互いに何も言わずに泣いていた。
病室では泣き声と嗚咽しか聞こえなかった。
私は泣きながら後悔していた。
おばあちゃんと会うたびに何回も聞く長話がうっとうしく思ってたこと
施設に入ってからあまり会えなかったこと
自分の口から声に出して伝えたかったことを伝えれなかったこと
兄は、眠っていても、体は機能していると言ってくれていたのに実行しなかったこと
伝えといてと言われた言葉さえ伝えられなかったこと
他にもたくさんの行いなどに対して自分を恨んだ。
おばあちゃん、ごめんね
その時は、 『ごめん』 ただ、その言葉しか出てこなかった。
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