第12話 最期の日

病院に着くと昨日と同じように手を消毒液多めで消毒し、病室に向かった。

病室に行く途中、デイルームの床で思いっきり横になって寝ていた長男を見つけた。

起こす前にとりあえず、おばあちゃんのところへ行った。


ピコン、、、ピコン、、、


無機質で規則的な音が鳴り響いていた。

おばあちゃんは目を開けることもなく、寝ていて時々、大きないびきをかいていた。

次男は長男を起こし、連れてきた。

おばあちゃんの状態の説明をして、最後に宣告した。


「多分、今日の昼間が最期だよ」


その言葉が、私にとってすごく重かった。

もう昼は回っていたため、母と妹と長男は先にお昼を食べに行った。

そして、私と次男はお留守番をしていた。

次男はデイルームで少し休むと言い、病室には私とおばあちゃん2人きりになった。

私は聞こえているかもわからないおばあちゃんの手を握って心の中で話しかけた。

((父方の)おばあちゃんが、『今までお世話になりました』って

 『今までありがとうございました、お休みになってください』って言ってたよ)

私は伝えた。

朝、自宅を出発する前に祖母から『病院へ行けないから代わりに伝えてほしい。』

と言われた。

まだ、本人が生きているうちは言いたくなかった。

声に出したら、亡くなったことを肯定しているようで出せなかった。

ずっと握りしめて、思い出に浸っているうちにおじさんが誰かと一緒に来た。

誰だろうと思いながら席を譲り、デイルームにいる次男の元へ行った。

一緒にいるうちに母たちが帰ってきて事情を説明し、

長男と妹と入れ替わりでお昼に行った。

病院になるべく近いところで食べた。

おばあちゃんが亡くなってからのことなどを話していた。

ほぼ食べ終わって病院に戻ろうとすると兄から電話が来た。

嫌な予感しかしなかった。

私たちは急いで病院に戻ろうと車に乗り込み、向かった。

向かっている途中だった。

病院と昼食をとった店の中間地点で2回目の電話が鳴った。

もう、泣きそうだった。

ちょうど私が助手席にいたため、電話に出た。

長男の声が電話越しに聞こえた。

少し震えていた。


 ――――――今、お亡くなりになりました――――――


「おばあちゃん、亡くなったって」

私は母と次男にそのまま伝えた。

誰も何も言わなかった。

ただひたすらに、おばあちゃんの元へ急いだ。

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