第45話 執務室でのチロ

「あーとうしゃんだー!」



「え…チロ?」



執務室で書類に目を通していたランバートは、目の前の光景が信じられない。国王陛下に手を引かれて入ってきた愛しい我が子。



チロはランバートに抱きつき、ランバートは嬉しそうに抱きしめる。それを微笑ましく見ているジェラルド。



「チロ、どうしてお城にいるんだい?」



「あにょねーかーしゃんときたにょー。でもかーしゃんがいにゃくにゃってージョンしゃんとここにきたにょ!」



ランバートの頭が混乱してきたので、ジェラルドが軽く説明する。やっと意味が分かったランバートが喜ぶチロを愛おしそうに抱っこする。



「おー、こいつがお前んとこのガキんちょか!」



「がきんちょちがうもん!チロにゃの!」



ぷんすか怒るチロ。



「あぁ!わりぃな!チロ、お前には礼を言おうと思ってな!」



そう言う男性。金髪で色気漂う大人の雰囲気の美丈夫で、きっちり服を着たランバートと正反対で胸元を軽く開けている。



「あにゃたはだれでしゅか?」



「俺はレオナルド・ヘルマーだ。リクの父親だよ。」



「リクにょとーしゃん!こんにちはー!」



チロはランバートにおろしてもらい、丁寧にご挨拶する。



「こんちは!リクと仲良くしてくれてありがとな!たまにはディークとも遊んでやってくれな!」



「ヂーク?だれでしゅか?」



「リクの兄だ。この前会っただろ?」



頭を抱えるチロにジェラルドが説明する。



「あー!にゃいていたおにいしゃんだ!」



「泣いてたか…そうか。早くリクとディーク二人とリタと暮らそう!」



改めて決意するヘルマー公爵。見た目は軽薄そうだが、根はくそ真面目なのだ。



「チロはここに座れ」



ジェラルドが椅子をもってきて、ランバートの隣に置く。チロは喜んでよじ登り座る。ランバートはジェラルドにお礼を言って皆が席に座る。



「チロ、少し待っていて下さいね。もうすぐ終わらせますから」



「あい!」



静かになる執務室。チロはお菓子を出されて、喜んで食べている。その光景が非常に愛らしく癒しに包まれる。



プゥー



静かな執務室に可愛らしい音が鳴る。三人は気づかない振りをしているが、肩が震えている。



「…でちゃった…」ボソッと言うチロ



その言葉に皆が堪えきれずに大爆笑が起こる。



「おい、盛大にやったな!」ヘルマー公爵が言う



「あ…ありがとごじゃいます…」照れながら言うチロ



「チロ、誉めてはいませんよ」苦笑いのランバート



「お前はそうでなくちゃな!」



ジェラルドが爆笑しながらチロに言う。



「いちゅもはちないもん!でもおいもたべりゅとでちゃうの」



その告白にまた爆笑が起こる。チロの飾らない姿にこのままでいてほしいと思うランバートだった。公爵家に戻ったらチロは変わっていくだろう。貴族らしく教育しなければいけないからだ。



その事を考えると気が重いランバート。だがヘルマーもジェラルドも同じ事を考え頭を悩ませていた。



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