孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi

第1話 ルル8歳です!

本日晴天 


私はルル、孤児院に預けた母がルルと名付けたらしい。私はよく町の子供達から孤児であることをからかわれたりするが、悲しいとか思った事がないし、思う暇もない。



「院長先生ー!洗濯干し終わったよ!」



「あらルル、ありがとう」



穏やかに笑う老婆はキルア。この孤児院の院長先生である。足腰が弱ってきたキルアに代わってルルが洗濯係をしている。この孤児院は子供が38人いて上は13歳下は赤子まで大所帯だ。



「じゃあ勉強してくるねー」



この孤児院は子供の教育にも熱心で、自立できるように教師がいる。ルルはその中でも優秀な成績を修めている。



「ルルおはよー!」



「おはよー、アンリ!」



アンリはルルと同じ年の親友だ。アンリは今日は食事係で微かにトマトスープの匂いがする。



(今日はトマトスープかぁ)



勉強会の前に朝食が出て案の定トマトスープとパンだった。そしてこの孤児院は上の子が下の子を面倒見る決まりだ。ルルは3歳の男の子チロの面倒を見ている。ルルはまだ寝ている同室のチロを起こしに行く。



「チロー!起きなさーーい!」大声で叫ぶ(周りも起きただろう)



「ねーね…うるちゃい~!」チロが目を擦りながら起きる。



「チロ顔洗うよ~」



ルルは小柄なチロを抱えると水道へ急ぐ。




「あールル姉!今日もうるさいよー!」下の子からのブーイングの嵐



「ルル!いつもありがとう!」上の子からの称賛の嵐



食堂へ向かうにはチロの天敵階段がある。チロは手摺に掴まりながら1段ずつゆっくりと降りていく。ルルは下で待っている。



「ねーね…抱っこ!」チロがぐずりだす。



「泣くなチロ兵士!もうすぐ天国が待っている!食事だ!」



「あい!だんちょー!」


チロは涙を拭き、また1段ずつ降りていく。そして最後の1段を降りる。

食堂は拍手喝采で迎える。



「チロ兵士よくやった!見ろ!食事だ!」



「だんちょー!」2人は抱き合い喜ぶ。




「皆いつも飽きないね…」アンリは苦笑いしている。



キルア院長の挨拶で食事が始まる。だがルルは違和感を覚えて目の前を見たくないがずっと無視は出来ない。



「チロを下ろして下さい、ジョンさん」



目の前にいたのは黒髪を短く揃えた大柄で精悍な30代前半位の男性だ。今はチロを膝に乗せてスープを飲ませている。



「よぉ!ルル!今日も一段と可愛いな!」



「ジョンさんは相変わらずウザいですね!」



「そうか!それよりちゃんと食べろよ?子供は遠慮しちゃいかん!」



そう言ってルルの皿にてんこ盛りにスープを入れる。するとまたチロにスープを飲ませている。チロ!雛鳥か!



「ジョンさん、勝手に入っては駄目ですよ。」



「ばーさんに許可取ったぞ!な!」



「ルル楽しいじゃありませんか」穏やかに笑うキルア



ルルは溜め息を吐くと、勢いよくスープを飲み干した。



「ねーねすごーい!」



「ルルはよく食べるな!よし!もっと食え!」



そう言ってまたトマトスープが振り出しに戻る。



この人本当にウザいです!





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