幕間
第1話︰好きです
「優李のことが好きです。これからは幼馴染じゃなくて、私のことを優李の彼女にして欲しいの」
中2のときに私は勇気を振り絞って優李に告白をした。
大丈夫。普段通りの私のように告白はできたはずだ。
恥ずかしかったのと、もし断られたときの恐怖から、素っ気ない告白になってしまって、内心とても落ち込んでしまった。
私は本当に可愛げのない人間だと思う。周囲の人からは、大人っぽいや綺麗などと言われるけど、本当の私はただの臆病者だ。自分の本当の気持ちを表に出してしまうと、嫌われてしまうのではないかと思って言動に制限をかけているだけなのだ。本当はいつも元気で明るい奏のようになりたい。あんな風に可愛い女の子になりたいって思ってた。
「どうかしら?」
優李からの返事が遅くて、私は恐る恐る顔をあげるとそこには口をポカーンと開けたまま固まっている優李がいた。
「ど、どうしたの?私の告白がそんなに嫌だったのかしら」
あぁ、優李を困らせてしまった。そんなつもりはなかったのに。やっぱり告白なんてしなければ良かったんだ。
「あっ、ごめん。実はさ、僕も今から告白しようと思ってたんだよ。だけどまさか羽月から告白されるなんて思わなくてさ、驚いちゃったんだ」
優李の返事に今度が私を口をポカーンとさせてしまう。
「だからさ、とても嬉しいよ。ありがとう。俺で良かったら付き合ってください。羽月大好きだよ」
私は嬉しくて、だけど信じられなくて涙が止まらなくなった。そんな私の肩をそっと抱き寄せて、優李は私の頭を泣き止むまでずっと撫でてくれていた。
―
私が優李を特別な人と思うようになったのは、小学生5年生のときにパパが病気で亡くなってから。私はパパのことが大好きで、家からいなくなってしまった事実を受け入れることができなかった。
家はパパがいたときと全然変わっていない。ソファーに座ってコーヒーを飲みながら、テレビを見ているいつものパパの姿がどうしても浮かんでしまう。私は家に帰って、パパの面影を感じるのがとても辛かった。
そんな私のことを一番に考えてくれたのは優李だった。
学校帰りに、落ち込んでいる私を花咲公園に誘って、いつも一緒に遊んでくれた。そういうことが何日か続いたある日、私は「パパのいない家に帰りたくないよ」と優李に泣き言を言った。
「羽月大丈夫? 家にいるのが本当にきついんだね。じゃあ羽月と咲夜さんが大丈夫になるまで、俺の家に泊まればいいじゃん! 部屋は余ってるからさ、2人くらいなんとかなるはずだよ」
まさかそんな提案をしてくれるなんて思わなかった私は、吃驚して何も返事をすることができなかったんだけど、そこからの優李の行動は本当に早かった。家に帰るなり物凄い剣幕で、優李のパパとママ、そして私のママを説得してくれたのだ。
優李凄い。何でこんなことができるの?
何で私のためにこんなに優しくしてくれるの?
優李の説得もあって、私とママは優李の家にお泊まりさせてもらうことになった。優李の説得を聞いてたママは、最初は驚いてたし「そんな迷惑はかけられないよ」って言ってたけど、優李のママとパパも一緒に説得してくれたから最後には「ありがとう」って言いながら、優李のことをギュッて抱きしめた。それを見た私は何だか悔しくなって、ママと一緒にギュッて優李を抱きしめちゃった。
冷静になってさっきの行動を思い返したら、恥ずかしいやら嬉しいやらで頭がパニック状態になってしまい、気付いたらベッドの上でゴロゴロゴロゴロと転がり回ってしまった。多分この瞬間に優李は私の中で特別になったのだ。
優李ともっと特別な関係になりたい。
この想いは中学生になっても変わらなかった。
だけど、この関係が崩れてしまうことが怖くて踏み出せないでいると、光輝が「大丈夫だから告白してみろよ」って後押しをしてくれたのだ。
優李の親友の光輝が言うなら大丈夫なはずだと信じて、私は毎年恒例になってる2人の合同誕生日会で告白をした。
すると優李も、その日私に告白をする予定だったと教えてくれた。
嬉しい。
優李も私のことを好きだと思ってくれていたんだ。
私は特別な人と、特別な関係になれたことがとても嬉しかった。
私は優李の特別になることができたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます