第26話
復讐のために覚えておかれても溜まったものではない。
「大丈夫か?」
「うん...茜澤君こそ」
「ああ。あの程度で怪我をするほど弱くない」
「本当に強いんだね...」
そう言いながら藤桜は地面に伏せた。観戦しているだけでも疲れたのかもしれない。
ホッと息を吐いたのも束の間。
「何だ~つまらないな~」
耳を蝕むような不快な声。木の影から歩いてきたのは、桑原たちだ。
「またか...どういうことだ」
「いや~君たちがこの練習場に行くのを丁度見てね。Aグループの人たちが予約しているのは知っていたから、予約版の文字を消しておけば問題でも起きないかなとか思ったんだけどさ~」
「全部お前たちが仕組んだってことか」
「そうそう。期待は全然無かったけど上手く進んだのは燃えたね。Aグループの奴らに完膚なきまでに叩きのめされるとおもったのに...つまんねえな」
ニヤニヤしながら話していた顔つきは一瞬でかわり、憎悪に紛れたような表情を見せた。
「まあ良いや~。君たちはめでたく退学。一つ誤算があったとはいえ、この作戦が成功しただけでも御の字だからさ」
「それもお前たちの仕業か」
「わかってたことだろ?」
「...ああ」
全てわかっていた。わかったところで何か変わるわけでもないけれど。
誤算というのは気になった。何一つ失敗もない、見事に桑原たちの企みにはまってしまったはすだ。
思考が面に出ていたのか、嘲るように笑みを含ませると滔滔と語り出した。
「本当は横の藤桜ちゃんにも責任を負わせたかったんだよ」
「え...どうして?」
「だって俺たちの誘い断ったじゃないか。教えてやるという厚意を無碍にしやがって!」
「それだけでか?」
「あ?そうだけど?一番は、お前と仲良くしてるところから許せなかったけどな。だから態々、茜澤に鍵を渡して藤桜に渡すように頼んだ。そうすりゃ、二人とも不正の疑いで問題になったはずだったんだよ!まあ連帯責任で藤桜も退学になる可能性もある、それに藤桜なんて雑魚、いつでも責任転嫁できそうだしな!ハハハハハハハハ!」
どこか嫉妬のような言動にも聴こえるが、単に俺への当て付けだ。
何度もこの嫌味が混ぜ込まれた笑いに出会している。
それは全て俺に向けた嘲笑で、まだ耐えられることは出来た。
だが藤桜に向けられた侮蔑に、怒りは憤懣に達していく。
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