第3話

「おはよう」

背が高く、無精髭を生やした男性教師が、どこかやる気の無く、腑抜けたように教室へ入ってくる。

年齢は30代前半ほどだろうか。見当がつかない。

「初めまして。1年6組を担当する蘇芳寛哉だ。ざっと見るに、このクラスは全体的にCランクが多いんだな」

各学年の生徒人数は400人。それぞれ40人ずつにクラスが分かれるため、クラスは10組まである。

それぞれのクラスを平均に保つことやランク毎に固まっているのではなく適当らしい。

故に一クラスだけAランクが固まっていることもある。

「じゃあ、グループの発表だ。まあこっちで決めてある。自由に決めさせても困惑するだけだろうし」

やる気のないように見えて考えてはいるらしい。初対面同士であれ、顔見知りであれグループ決めは必ず衝突が起こる。一人だけ残されたときの絶望があるくらいなら第三者が決めた方が余程良い。

「席順も同じグループで固まってるからその通りに組んでくれ。ちなみにこのグループはずっと固定だから喧嘩とかして険悪になるなよー。あとは自己紹介とリーダーを決めてくれ」

大きく名前の書かれた紙が黒板上に貼り付けられた。

グループは4人で構成され、チームとして生活することになる。メンバーは同じランク同士で決まるため、俺はEランクの生徒と一緒になってしまう。

E-7 メンバー

・茜澤拓真

・樫谷晃

・藍水玲奈

・藤桜翡翠

E-8はEランクメンバーの7個目のグループということか。これは全体での換算だ。

やはり俺はEランクとして扱われている。

先生は貼り終えると、早足で教室を出て行ってしまった。

追いかけようと席を立とうとすると潑剌声で制されてしまった。

「ヤッホー。この四人で良いのかな?アタシは藍水玲奈だよ!まあランクが低い者同士頑張ろう!」

低い者同士という言葉が癪に触る。

何だこの軽い女子は。制服は第二ボタンまで開け、スカートもやたらと短い。

しかもアホっぽい雰囲気が充満している。あまり話したくない部類だ。

「オレは樫谷晃。学力はそこまでだが、技術の方は自信があるぞ。これからよろしく!」

こちらも元気が有り余っている。よくEランクでここまで自信にありふれている。

「え、イケメンじゃん」

「いやいや、お前も可愛いぞ?」

「やだー。もう」

なぜこんな低俗なやりとりを見せつけられなければならないのか。

確かに樫谷の顔は秀でており、周りからは注目はされている。

いや、最低ランクということに謗られているのかもしれない。

「...私は藤桜翡翠です。みなさんの足を引っ張らないように気をつけます...精一杯頑張ります...」

藍水とは対称的で暗い感じの女子生徒だ。身嗜みも整っていて、制服もきっちりボタンを止めている。

「えっと、茜澤君の番だよ?」

「あ、あー茜澤拓真だ。Eランクたが、変わるかもしれない。よろしく」

「変わるって何だ? オレたちと同じEランクだろ?」

「今はな。理由があってAランクに上がるかもしれない」

「はははは。Aランクに憧れるのも分かるけど、嘘は良くないぞ?」

「いや、俺は」

「大丈夫! アタシたちだって同じなんだから一緒に頑張ろうよ!」

全く信じてくれそうにないどころか取り合う気もない。

そりゃそうだ。いくらAと自身が言おうが現在はEだ。嘘を吐いているとしか思われない。

理解はしていても、頭に血が上ってしまいそうになる。

「もういい。少し出てくる」

「おい! ちょっと待てよ」

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