第3話

 はぁ、やっちゃった。でも仕方無かったの。




 王子様も憎いけど、彼女の命を奪ったコイツが一番憎い。昨晩からずっと、ずっと、ずっと! いつか殺したいと思っていた。




 自分からこんなチャンスを、それも次の日にくれるなんてなんて優しい人!




「あぁエリザロッテ様ぁ、私やりましたぁ……」




 ロビーで見かけ、先に奥へと行っていた侍女がやってくる。このまま私は死刑だと思う。でも彼女と同じところに行けるなら……




 目を瞑って捕まるその時を待つ。死を告げる筈の足音はどんどん近づいてきて……




 ふいに息が出来なくなった。唇には懐かしい柔らかさが、鼻からは懐かしい香りが入ってくる。




 恐る恐る、だけどちょっと期待しながら開けた目の先には




「その口調を辞めなさいと言ったでしょう?」




 あぁ、あぁ……私の大好きな人。どうして最初に見た時に気付かなかったのだろう。




この侍女は……


「エリザロッテ……さまぁ……!」




 生きてた!生きてた!




「でもなんで!?」


「アイツの殺したフリよ。切られたショックで気絶しちゃったみたい」


「ふえぇぇ…… 良かったぁ……!」


「よしよし」


「あっ、でもどうしよう…… じゃあ私無実のラダマス君を……」


「えぇそうね。でも、彼が生きていても私達はきっと縛られるだけ。漸く二人になれた。私たちは自由よ!逃げましょう、一緒に!」




 甘美な提案だった。乗る以外なかった。




「はい!」




 こうして私たち2人は大好きな人を手に入れた。




 きっとまだ乗り越えなきゃいけない壁は一杯あるけど、私なら、いや私たちなら大丈夫!




 ……だってこんなに、幸せなんだから!

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