花梨先輩とお出かけ
「わっ、あっきーこの服すっごく似合いそうだよ…!」
そう言って花梨先輩が指し示すのは、黒とカーキの2カラーで構成されたパーカー。
オーバーイズでゆるく着こなすことによりとてもお洒落だ。
一方それを進められた俺の視線の行先は、隣のマネキンに飾られている女性服。
黒いパーカーに、カーキのショルダースカートがセットになったワンピース。
……
「花梨先輩、ペアルックですよ?これ」
「……」
数秒後、固まっていた花梨先輩がようやく現実を認識してぼふっと赤くなる。
耳まで真っ赤にそまった花梨先輩の体に、そっと先程の服をあてると、艶めかしい黒髪に驚くほど映えていた。
「きれい……」
「えっ!?」
2人して真っ赤になって、下を向く。
と、その時…大人のものと思わしき足音が響き、2人してびくりと後ろを振り向く。
仮にも学校を抜け出している身…とくに、そう。警察なんかに補導されては…
「あっきー、警察…。それに私たち」
振り向いた先にいた警察に、俺たちは揃って身を縮こまらせた。
そして、花梨先輩の視線に吸い寄せられるようにして下を向く…。
「「制服だ…」」
こういう所は、真面目が抜けきってない。
制服だと知った途端、補導…生徒会辞職…そんな言葉が頭をよぎる。
花梨先輩はもしかしたら、そこからいじめに発展することまで思考を巡らせたかもしれない。
華奢で真っ白な手が弱々しく震えていた。
「っ……!」
1歩、また1歩と警察が近づいてくる。
俺たちの気配には…おそらく気がついていないだろう。
だから。
「花梨先輩、そこの服取ってください。」
「え!?」
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
「ふぅ…助かった」
「い、いやいやいやっ!試着室逃げ込んでどうするのっ?」
現在なんとか警察から逃げ切り、抜き足差し足で試着室へと到着したところ。
残りの試着室は全て埋まっており、慌てまくった結果。
ひとつの試着室に花梨先輩を押し込んだあと、俺も飛び込むように入る。
靴は俺の分だけ試着室内に持ち込んだ。
試着室の服をかけるスペースには、先程花梨先輩が見ていたパーカーと、俺が花梨先輩に仮試着させていたワンピース。
ここから出たとしても……制服のままだと補導される確率が高い。
それに…この服、とっても花梨先輩に似合ってた、と思う。
頭の中で今日入れてきた財布の中身を確認し、こっそりと値札もチェック。
よし、これくらいならギリギリ買えそうだ。今月のバイト代も入ったばかりだし。
琴先輩の借金は…琴先輩のお父さんの寛大なお心により帳消し。
まあそれでも……あのバイトは続けているけど。
だから、まあ。
花梨先輩の服1着くらい、プレゼントする余裕はある。
「花梨先輩…この服に着替えてみて貰えませんか?」
「え、こ、ここでっ!?」
…
ここ同じ試着室
狭い
2人
「すみませんでしたぁぁぁ!!」
「そ、その声でバレるっ!あっきー!しー!」
「すみまっ(((」
すぐさま口を塞がれる俺と、くすりと微笑む花梨先輩。
やっぱり花梨先輩には……この服が似合う。
「んー、じゃあ。こうしよっか」
「あっきーもこのパーカーに着替えて?そしたら私もこのワンピースに着替えよう!それでね、買った後に着て帰りますって言えばバレないんじゃないかなぁ…。」
そんな花梨先輩の提案。
「あ、もちろんお金は先輩の私が」
「いや俺が」
「え、え!?悪いよ!だって私があっきーとペアルックしたいだ…」
「え?」
「…〜っ!も、もう…!」
「も、もういっかい…」
「言うわけないじゃん〜…!!べーだ」
真っ赤になって俯く花梨先輩と、それより真っ赤になる俺。
「じゃあ…そんな嬉しいこと言ってもらったお礼に俺が」
「だーめっ!あ、じゃあ…」
「もしよかったら、あっきーが私の服を…私があっきーの服を買ってもいいかな…?」
「え?けどなんの意味が、、」
「もう…私が、あっきーにプレゼントしたいのっ…!そ、それで…」
「私もあっきーに、、さ、最後のプレゼント……貰いたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます