反則だらけの非日常は
「これが、恋ってことなんだよ……えへへ、おかしいな、あっきーが私に教えてくれたはずなのに」
「ねぇあっきー、今私に、恋……してる?」
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
屋上、花梨先輩が俺の顔を鼻先が触れ合いそうな距離まで引き寄せ、思わず見惚れそうな笑みを浮かべる。
儚げに潤んだ瞳で、すがるように。
俺との距離をさらに近づけようと伸ばした片手は……ぽふっと頼りない音を立てて、俺の片手に包み込まれる。
「……っ!?」
「すみま……せん」
……
屋上からみえる青々とした空を、俺の叫ぶような声が切り裂く。
それと同時に握った手にぶつけそうな勢いで頭を下げる。
喉の奥にぴりりと痛みが走り、鼻の奥がじーんと熱くなった。
情けないことに……また俺は、泣きそうだ。
「うんっ……うん……分かってた……分かってたんだけどなぁ……」
ずっと、この答えを待たせていた。
先送りに、先送りに……して。
こんなにも傷つけた。
先輩の涙が乾かぬ間に、また俺が先輩を泣かせる。
「キーンコーンカーンコーン」
「えっ」
「はっ」
「「ぷっ、あはっ……こ、このタイミングっ!?」」
間の抜けたタイミングで始業のチャイムがなり、校内がにわかに静かになる。
対照的に俺たちは思わず顔を見合わせて吹き出した。
俺たちは……生徒会役員。
真面目、賢い……そんな、欲しくもないレッテルを手にしている今。
そんな俺に花梨先輩が1歩踏み出して、ポケットからリボンを取り出す。
あの日……
花梨先輩が虐められていて……助ける、だなんて大袈裟だけど。
そんな、あと。
髪を切ってと言われた時の……あのリボン。
「これって…………」
一瞬の静寂の後、リボンを左手に持ち替えた花梨先輩が俺の前に跪く。
「ね、あっきー。今日だけ……悪い子になって、私のものになってくれない?」
そう言ってリボンをピンっと両手で広げた。
俺もひざまずき、花梨先輩の瞳をしっかりと見据えてー。
片手を広げたリボンの中央におく。
目にも止まらぬ早業で俺の手首にリボンを結びつけた花梨先輩は。
「えへへ、今日……。この瞬間だけは……。私のあっきーでいてくれるよね?」
そういって緩やかに微笑んだあと、屋上から校舎へ続く扉を開け放ち、しっかりと鍵をかける。
そういうところは……これからの行いに反して真面目だなぁ……なんて思わず頬が緩んだ。
階段を跳ねるように駆け下りながら、チャリっと鍵を揺らしてみせる花梨先輩。
「ね、あっきー。学校抜け出して……どこいっちゃおうか?」
「んー、まずは駅前とかどうでしょう」
「おっ、いいねいいねー!そこもしかして虹湖ちゃんと行こうって思って検討してたお店とかある感じ?」
表面だけの笑みに……俺はもう、騙されない。
「いえ、花梨先輩と行ったら楽しそうだなって思ってた店が……何件かあったので」
とたんにぼんっと効果音がしそうなほど赤くなる花梨先輩。
「もうっ、反則だからね?」
俺の手を引いて階段を駆け下りていた花梨先輩が、ぎゅっと体を密着させて耳元でせーのっと囁く。
そっちの方が……よっぽど反則だ。
玄関までの段数は……あと2段。
とんっと2段飛ばしで着地すると、少し名残惜しそうにしながらもそれぞれの下駄箱へと向かう。
これが……今の俺たちの、距離。
近くて遠い、距離。
けどこの気持ちは……さっきの答えは……
変わらないから。
「花梨先輩は俺にとっての大切ですよ」
「もうっ、それ反則」
俺は、今日……。
反則だらけの非日常で、初めて学校を抜け出す。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
次回は花梨先輩と秋とのお出かけ編です!
今回の回は一緒に出かけるの虹湖ちゃんじゃないの!?って思った方もいるかもですが……作者としては花梨先輩にも報われて欲しい……!という複雑な思いで書かせて頂きました。
花梨先輩の秋への想いが消滅することはないと思いますが、次回のお出かけ回で少しでも花梨先輩が前に進めますように𓂃◌𓈒𓐍
また、前日応援コメントをくださった方ほんとにありがとうございます!!
更新期間が空きすぎてもういまさら……なんて弱気になってたりしたのですが、、、貴方のコメントのおかげでがんばろうって気持ちになれました……!
言葉って素敵ですね⸝⋆*
ほんとにありがとうございます!!
このままラストまでこんどこそ駆け抜けます……!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます