恋
「大好きっ!!!私あっきーのこと大好きだよっ!!」
俺の手を引き階段を駆け上がった花梨先輩は、屋上のドアを勢いよく開け放つなり繋いでいた手を離し、俺にムギュっと抱きついて叫んだ。
鼓膜がビリリと震え、思わず反射的に耳を塞いでしまう。
その動作に花梨先輩は俺から離れると、俺の両手を耳から剥がし、いたずらっぽく微笑んでみせた。
まるでさっきまで泣いていたことなんて……忘れてしまったかのように。
「ちょっと、告白してる女子に耳塞ぐって酷くない?笑」
「え……?」
再び俺に向かって笑いかける花梨先輩。
そんな、主人公然とした花梨先輩に俺はぽかんと空いた口が塞がらなかった。
だって、だって……自惚れが、事実に変わったから。
きっとまた…あの時みたいな顔をしているのだろう。
入学初日に告白された……あの時みたいな顔を。
「花梨先輩が、俺に……?」
花梨先輩が泣いた理由、普段からの思わせぶりな態度……そして屋上へと手を引かれるシュチュエーション。
まさかな、だなんて考えてはいたものの、現実になると急激な展開に頭が追いつかず、俺は慌てて頭を振る。
思い浮かぶのは琴先輩とハグをしていた花梨先輩と、泣きそうな顔で最後に手を振る琴先輩。
「あ、ありがとうございます?」
「もーそれじゃOKなのかダメなのかわかんないでしょ?」
そんな花梨先輩の言葉に俺が複雑な表情で考え込んでいると、花梨先輩は俺の手を引きグッと自分の顔に近づけて……
「どう?ドキドキする?」
そう聞いたあとくしゃりと顔を歪めた。
まるでその答えなど、初めから分かっているかのように。
「……本気、ですか?」
そう、最初から決まっているのだ。
なのに、なぜ即答できない……。
顔を近づけられた時、思い浮かんだのは目の前にある花梨先輩の事じゃなくて……
『あき、あそぼ!』そう言って手を引く虹湖。
満面の笑みでミサンガを受け取る虹湖。
そして、『覚えてない…か』なんて悲しそうに微笑む虹湖。
そして、琴先輩のきつく握りこんだ拳に花梨先輩と過ごした楽しい日々。
「花梨先輩は……大切、です」
そう絞り出すのが精一杯だった。
虹湖も花梨先輩も……同じくらい、大切だ。
そしてその大切の種類が違うことにも……気がついている。
…………
再び黙り込んでしまう俺に、花梨先輩はしょうがないなぁなんて言って目元を軽く拭う。
ポタリと花梨先輩の足元に雫がこぼれ落ちた。
それなのに、花梨先輩は俺に問う。
答えなどわかりきっていても、口から自然とこぼれ落ちてしまかのように。
「ねぇ、あっきーもしかしてさ、虹湖ちゃんのこと考えたら胸が苦しくなったりしない?」
「……」
その言葉を皮切りに、花梨先輩の口から溢れ出すのは俺が虹湖に抱いている感情そのままだった。
「その人のちょっとした仕草に見惚れたり、どんな所も可愛いって思ったり」
「……」
そう、ここまでは。
「ちらっと見える横顔にかっこいいって思ったり。」
「え?」
この言葉を発した瞬間、一瞬花梨先輩の雰囲気がガラリと変わる。
思わず息を飲むほど……綺麗だった。
「あっきー、こういうことなんて言うかわかる?」
「……」
「じゃーあーっ、先輩が教えてあげるっ♪」
そう言ってにっこり笑う花梨先輩。
その瞳からこぼれ落ちる涙を指摘する人は、誰もいない。
「これが、恋ってことなんだよ……えへへ、おかしいな、あっきーが私に教えてくれたはずなのに」
そんな花梨先輩に俺は言葉が見つからなかった。
いや、真剣な言葉には真剣に答えなければ失礼。
それは頭ではわかっているのだ。
なのに……なのに、言葉が出てこない。
俺の目からも涙がこぼれた。
こんなに真剣に想いを伝えてくれる人がいて……けど、俺は。
「ねぇあっきー?私があっきーに恋してるって、信じてくれた?」
泣き顔を見られたくなくて露骨に視線を逸らす俺に、花咲音さんは容赦なく問いかけてくる。
答えがどうでも……必ずその答えを聞くという決意の籠った瞳で。
……
「ねぇあっきー、今私に、恋……してる?」
そう俺に問いかけると、花梨先輩は緩やかに微笑むのだった。
✧︎
テスト前につき暫くお休み致します( ´•̥ ̫ •̥` )
17以降急いで更新致しますのでお待ちいただけると幸いです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます