投げ捨てた考えと自惚れ

更新遅れてすみません……!!

なのでざっくりあらすじ紹介……。

―――

自分のの存在に気づいた秋は花梨先輩と虹湖に「話がある」とメッセージを送る。

虹湖は告白の返事を貰う覚悟を決める一方、花梨は秋へと告白する覚悟を決め、虹湖から赤いリボンを引き取る。


次の日、秋は約束通りの時間に花梨先輩と屋上にて落ち合い、虹湖伝いにでも嫌な過去を聞かせてしまった謝罪をする。

一方花梨は、秋が1番辛いはずなのに、自分のことを気遣う仕草に脈がないことを確信し、気持ちが追いつかず泣きながら屋上を去ってしまう。


屋上を去った花梨が逃げ込んだのは生徒会室。

ヤケになってリボンを捨てようとするも、たまたま書類仕事をしていた琴に防がれてしまう。

秋が花梨を追って生徒会室まで走ってくると、琴に話を聞いてもらい告白する覚悟を決めた花梨が秋のもとへ向かおうとする。


『秋に恋する花梨』に恋をしていた琴は諦めきれず、秋の前で見せつけるため花梨に抱きつく。

最後は照れのあまりはぐらかし、花梨は直ぐに秋の元へと出ていってしまった。


【秋side】

花梨先輩と琴先輩の……その、衝撃的な場面を見てしまった俺は、赤面しつつ下を向く。

花梨先輩が泣いていたから追いかけてきたけれど……果たしてそれは、正しかったのだろうか。

グッと奥歯を噛み締めると髪をかき乱し、「あ〜もうわかんねぇっ!!」と声を押し殺して叫ぶ。

殺したはずなのに廊下にいた生徒の何名かがこちらに視線をよこした。


大事なこと、花梨先輩が俺の過去を知り嫌な思いをさせてしまった謝罪は出来たはずなのに。

なぜ、花梨先輩は泣いてしまったのだろうか。

それが分からない自分が、情けなくてもどかしい。

涙が溢れそうになり、グッと拳で拭った。


そんなことをしていると、ふと頭の中に………直視したくなくて投げ捨てた考えが顔を覗かせる。

そんな考えはどんどん膨らんでいき、無視することが不可能になる。


……花梨先輩は俺に同情して泣いたんじゃないか?


慌てて首を横に振るも、体はブルりと震え冷や汗が吹き出す。

どうしようもない嫌悪が形となって「まさか……な」とかわいた溜め息を漏らす。

そう、まさかだ。

花梨先輩に限って俺に同情するなんてありえない。

なのに、何故だろうか。

1度思い浮かんだ考えは、なかなか消えてくれない。


かわいた笑みを貼り付けたまま立っているとガチャりと音がして花梨先輩が生徒会室から顔を出す。

瞬間先程の場面が思いだされて、俺は自然と顔を逸らす。

花梨先輩と琴先輩のハグ……

絶妙に、気まずい空気だった。


俺と花梨先輩の距離はほぼ30センチ。

1歩分しか離れていない。

「花梨先輩先程はあんな場面を見てしまい……!」

いや、泣かせたのを謝るのが先か?

花梨先輩がドアを開けてくれるのを待っている間、何回もシュミレーションしたはずなのに、突然放り込まれたハグという爆弾で頭がいっぱいになってしまいしどろもどろになる。


そんな俺に向かって花梨先輩は1歩を踏み出し……


「ち、近いですって!花梨先輩!」

俺が慌てて後ろに下がると、生徒会室の窓から琴先輩がなにやらジェスチャーをしている。


さっさと行け、とばかりに片手をひらひらふっていた。

もう片方の手は固く握りこまれている。


「あ……」

瞬間脳裏にフラッシュバックするのは先程のハグ。

「琴先輩…から、だ」

花梨先輩を強く抱きしめる琴先輩の華奢な腕。

それはまるで行くなと言っているようで…


琴先輩は、花梨先輩のこと……


数秒間思考した後、そんな結論にたどり着き俺はますます顔を赤らめてしまう。


「あっきー?どうしたの?」

そんな俺を見て、目の周りがうっすらと赤くなった花梨先輩が俺を呼んだ。

刹那、ぐいっと手が引かれ俺は花梨先輩の胸に押し当てられる。


思い浮かんだのは、興奮でも、花梨先輩が好き、なんて思いでもない。


「琴先輩がみてますっ……!」

俺の口から出たそんな言葉に、花梨先輩が一瞬泣きそうな顔をしたあと生徒会室を覗き込む。

隔てているのはドア1枚のみ。


花梨先輩と目が合うと、琴先輩も何故か泣きそうにわらって先程と同じように軽く手を振った。


……俺は、、、何となく。

わかってしまったような気がする。

そしてそれは……自惚れであったらいい、なんて言ったら花梨先輩にも琴先輩にも失礼だろうな。



「あっきー、ちょっと屋上まで来てよ」

「……わかり、ました」

始業まで残り数分。

虹湖にはもう断りのメッセージを入れてある。


……もし、本当に俺の予測が正しければ。


なんて、な。


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