恋するヒーローはAIになった

里芋の憂鬱

第1話 I`m a HERO?

 ヒーロー、それは善良な市民の味方、悪は許さず、正義の鉄槌をくらわす。それは昔から変わらない。


 現代において、その需要は高まってきた、AI の発達、急激な科学技術の発達による武器の大量製造、人類の増加などで犯罪件数は年々増えている。2030年度で50万4303件だったのに対し、前年度の2040年は99万5040件と増加傾向にある。


 ここまで犯罪が増えると警察官だけでは手に負えず、これまで個人や企業で活動していた1部が警察の管轄になり、警察と直に連携をとれるようになった。それができるようになったのは5年前の出来事である。現在、西暦2045年犯罪は増え続けるばかりなのであった……




 目が覚める。


「いったぁ、私何してたんだっけ?」


 頭に痛みを覚える。


「ここは?」


 近代的というべきか、SFチックな部屋で、真っ白な天蓋てんがい? っていうんだっけ、まぁ大きいベッドに寝かされていたらしい。


 バシュ!!


 SF チックな扉が勢いよく開く。


「おはよう、神谷真衣君」


 サングラスを頭に乗せ、白衣を着た男が落ち着いた雰囲気を醸し出しながら歩いてくる。


「あぁ、まずは改めて自己紹介。僕はこの萩野総合研究所のヒーロー科学専門に扱ってる、

星野玲です。僕らのチームのリーダーです、昨日は詳しく言ってなかったよね、改めてよろしく」


「え? 何言ってるんですか?」


 多分今すごい間抜けな顔してる。


「あーえっと……もしかして忘れてる?」


「何がですか?」


 思い当たる事った全くない。というかなんでこんなところにいるんだ?


「あーそっかなるほどねー今日何日かわかる?」


「えっと今日? 今日は4月7日?」


 記憶ではそのはずなんだけど、違うのか?


「いやー惜しいね、今日はね4月14日だよ。あーじゃあ1週間か、1週間飛んでるね、うん」


 惜しいってなんだよ! って言いたくなったがぐっとこらえた。


「飛んでるって、記憶がってことなんですか?」


「そうそう記憶がね、まあ多分そのうち戻るから」


 多分でいいのかよ! しかもこの男なんかチャラい?


「まあそれはいいとして__」


「よくないですよ!!」


 思わず声が出る。記憶がないのはまぁ仕方ないとして、この1週間の出来事ぐらいは知りたい。


「ここ1週間何があったか教えてもらっても……」


「あぁ! そうだよね! ここ1週間かぁー」


 なんだろう、鼻につくなこの男。


「ここ1週間はね、結構いろんなことあったけど、そーだなぁ、まずは、君の彼氏君の話なんだけど、驚かないで聞いてほしい……君のお友達の山野康太君は亡くなったんだよ」


「え? いやそんな、そんな冗談笑えないです」


「こればかりは本当なんだ。交通事故でね」


 涙がこぼれる、体から力が抜けてベッドに倒れこむ。


「だが、心配しないでほしい」


「どうしてそんなこと言えるんですか⁉」


「どの反応はごもっともだ、けど話したかったのはここからなんだ。実はね、山野君の脳の復元ができてね、その情報からAiを作成したんだ。なぜそんなことしたのかというと……」


「ちょっと待ってください! それじゃあもう康太君に会えないってことなんですか?」


「本人にはね」


「じゃあ意味ないじゃないですか!」


「いや、意味はあるよ、ほんとはこのAIはヒーローのサポートスーツに組み込むはずだった。


 けどね、初めの1体しか成功せず、そのプログラムをコピーしても反応はなし、だがその1体は違った。初めて放った言葉は何だったと思う?」


「そんなのわかりませんよ」


 少し棘があるイントネーションで言う。


「初めて放ったのはね、『君に逢いたい』だったよ」


「え?」


「ほんとだってぇー僕も驚いたんだけどさ、君たちほんとに仲良かったんだ」


 びっくりした。彼はそんなにそういう言葉をいうタイプじゃなかったからなのと、ヒーローとして活動していた彼は自分から何かするという行動をとることが少なかったからだ。


 そう彼はヒーローだった、町の、そして私の。強盗があったと通報があれば、飛んできて強盗を捕まえる、困っているおばあさんがいれば優しく手伝ってあげる、そんなヒーローだった。


「それで、彼を失ったショックで自殺しかけていた君を彼が助けたんだ。それだけで意味があるだろう?」


「助けてくれたんだ……なら、でもAIなのに動けるんですか?」


「あぁ、急造でヒーロースーツを作って動けるようにしてね」


「スーツがあれば動けるんですか?」


「スーツが自走するのは前からあるんだよ。まぁ君にはそれを着てもらうんだけどねぇー」


「着てもらうってどういうことですか?」


「そういうことさ。じゃあこっち来て」


 部屋から出るように促される。部屋から出て真っ白な廊下を歩いていくと、大きなモニターと操作盤のようなものがたくさんある、管制室?的なところに連れてこられた。


 4人ほどの人が椅子に座り談笑していた。1人は女性、薄化粧できれいな大人の女性な感じ。


 他の3人は男性で、かなりゴツイ感じのおじさんと、若い男性、1人は眼鏡で、1人は華奢な感じだ。


「あ、博士だ」


 眼鏡の男性がつぶやく。


「やぁ諸君、この子が僕らのヒーローだ」


 ヒーロー? 私が?


「何言ってるんですか?」


「だから、君がヒーローなんだって。まぁ正確には君と山野君なんだけどね」


「ガハハハッ、そんな説明だとわからんだろ。お嬢ちゃんその顔だと初耳って感じだろ?」


 ガタイのいいおじさんが陽気な感じで近づいてくる。


「こんなおっきいおじさんが近づいたら怖いでしょ」


 眼鏡の人が言う。


「まあでもこれからお互い長い付き合いになるんですから」


 華奢な男がつぶやく。


「簡単に言えば、そうなっちゃうんだけどねー」


 女性が星野の肩をつかむ。


「じゃあみんな自己紹介しようか」


 星野が言う


「じゃあ俺からかな。俺は神崎豪だ、俺はメカニックだ、よろしく」


 ガタイのいいおじさんが手を伸ばす。


「よ、よろしくお願いします」


 握り返すとゴワゴワしていた。


「あー、次自分で。自分は山田斎です、自分はオペレーターです、お願いします」


 眼鏡の人が言う


「じゃ、じゃあ次ボクですか、えっ、えっとボクは吉岡宗です同じくオペレーターです、よろしくお……」


 華奢な男がいう。最後のほうなんて言ってたんだろ。


「次は私ね、私はセイラ・レイアット、メディックよ」


 女性が話す。


「あとは……」


「あと俺かな? 久しぶりっていう感じじゃないかな」


 聞き覚えのある声がした。


「ほんとにAIなの?」


 思わず訊いてしまった。


「まぁ、うん。でも真衣のためになるならそれでもいい、俺はどんな形でも真衣を守るよ。まぁでも、空手日本一の女の子を守るっていうのもおかしな話なんだけどね」


 彼の声で、彼のような話し方で、彼が言うような、こっちの気持ちを揺さぶるようなことを無意識に言ってくる。完全に彼だと思ってしまった。体はSF 映画のロボットみたいだけど。


「着てみたら?」


 レイアットさんが言う。


「どうしたらいいんですか?」


「大丈夫動かないでね」


 そう彼が言うと近づいてきて、手をつなぐと、カシャカシャと音を立てて金属のような小さなものが体にまとわりつく、体全体が覆われたときに目を開けると、目の前にいろんなメーターやらなんやらが出ていて混乱していると、


「大丈夫、真衣は何も考えないでいいから。どんな感じ? どっか痛いとこない?」


「うん、別にないけど」


「まずは戦闘訓練から……」


 ビービービー


 警報が鳴る。


「H市北所から出動要請!」


「うんちょうどいいね! 習うより慣れろだ! 出動!!」



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