第186話 この人も勘違いしてそうだね

「そういうのはなしにしましょう。僕もリリウムさん達には世話になっていますし、アーサーには助けて貰っていますので」


「ご寛大な指示を拝命致します。ですが、せめてアダムの末裔様とだけ呼ばせて下され。あたしらコボルト族にとってあなたはそれ程の存在なのです。アダムと言えば、数百年の年月を生きられ、霊的力も御使いと遜色なかったと伝え聴いております。すなわち、生命の長として君臨された方だったと」


「確かにアダム・カドモンは霊的位格が高かったでしょう。ですが、それが続いたのは二千年前の神のご降誕の時までです。それ以来、我々は奇跡の行使を容易く出来なくなってしまいました」


 半分嘘である。


 アダムの末裔とあまり買い被られては後々の火種になりかねない。


 だから真実と虚偽を織り交ぜて話している。

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