第71話 各国の思惑

「何故王国は製鉄技術が盛んなのですか?」


「良質な鉄鉱石と石炭があるからじゃ。ソドムにも鉱山は確かにある。じゃが、ソドムは世界の覇権を握り続ける以上、自国の資源は消費したくない思惑もある」


「なるほど、だから貿易をしている訳ですか」


「王国の造船業は大したものじゃが、それでもソドムとの交易に使える代物ではない。だからこそ学術都市は交易都市としても栄えている。二つの大国に挟まれながらな」


 この賢老はやはり強かだなあ。三権分立だけじゃなく、交易のことを考えている。


 国家の基本は経済だと心得ている。そして、国民生活の豊かさがそれに繋がっていると確信している。


 ソドムと違い、決定的に治安の良さが目立っていた。理性的な文化だ。法によって差別を禁止して良い治世をしている。


 強力な指導力だけではない。強靭な理性が働いて統治されている。三権分立は普通市民の発案からなるものなのに指導者自身が行うのは稀だ。


 欲より先の世界を視ている。


 敦煌みたいな都市なのだろうな。東西を結ぶ中継地点の役割を果たしているのだ。

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